◇文字遊び・PJ◆
□14.糸◇
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お前を縫い付けるモノが欲しい。縛りつけてしまうような太さのモノじゃなくて、少しだけ緩めば絡んでしまうくらいの細さのモノを…。
糸
アイツは、また行ってしまう。軍属として仕事を全うする為に。国の為に。
「ジェイド…」
なんとなく彼の名前を小さく呼べば、いつもと同じように彼はすぐに気が付いて、出兵前の与えられた24時間の猶予を全て俺の為に使ってくれた。
「他に何かしたいことは無いのか?」
一度、そんなことを彼に聞いたことがある。生死が伴う軍にいて、出兵前のこの猶予を自分といることで無駄にしているのではないかと思ったからだ。
「無い…ですね。ここにいることが出来れば十分です」
彼は、少し考えてからはっきりと言った。俺の考えが無駄であったかのようにさらりと。
そう言い終えた彼は、それで満足したのかゆっくりと夢の世界に沈んでいった。
すこしたって俺は、横で静かに寝息を立てる彼の頬に指を伸ばしてみた。
冷たいのではないかと思わせるくらい白い肌は、触れればやわらかく、そしてほんのりと温かかった。
あぁ…このまま、お前を縫い付けてしまいたい。このまま、俺の側に。ずっと。永遠に。
例え本人の意思に添わなくても、温かなお前の白が冷たい白に変わってしまわぬうちに…。
終