05/05の日記
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小話ー2013 5月4日ー 警視庁と工藤
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「ねえ、工藤君。今日なんか予定あったんじゃないの?」
長年刑事をやっていると、些細なことも気づく洞察力が備わってくる。
例えば、隣で推理を披露していた高校生探偵の携帯がひっきりなしに点灯しているところとか。
もうすぐ日付も変わる。
こんな時間まで事件を手伝わせて申し訳ないが、今日も彼のおかげで捜査がはかどったのは紛れもない事実。
一段落付いたところで、何度も光るそれの存在が気になってしまった。
プライベート、と思いながらも弟のような彼につい聞いてしまう。
あたしの視線の先に、自分の携帯があるのに気づいて、工藤君はばつが悪そうに困った顔をした。
「あ、すいません。電源切れなくって」
「バイブも音も切ってあるから良いのよ。珍しいわね」
「メールが届くんです」
「メール?」
「ええ、今日誕生日だったんです。あ、もう昨日ですね」
携帯の日付は12時を回ったところだった。
「え、えええ!」
爆弾発言。今日の事件の犯行トリックより衝撃的な。
あたしの叫びに、高木君が飛んできた。
佐藤と同じく叫び声を上げれば、千葉君が飛んできて。
目暮警部が飛んできてからは、大変な騒ぎになってしまった。
「工藤君!あたしたちに祝わせてくれるわね!まずは一軒目よ!」
彼の肩をつかんでタクシーが止めやすい大通りに向かう。
「え、ちょっと佐藤さん?」
工藤君が戸惑っているみたいだから安心させてあげる。
「大丈夫よ、酒場には連れて行かないから」
「いや、そうじゃなくって」
止めたタクシーに乗り込む。
あたし、工藤君と乗って高木君が最後。
前の席に目暮警部。
「ねえ、工藤君」
高木君は、流れに付いていけない彼にゆっくり話しかける。
「祝わせて欲しいんだ。今日だけじゃなくて、いつでも僕たちは工藤君が居てくれることに本当に感謝しているんだから」
「まったくだ。それに君はもう少し子供らしくても良いんじゃないかね。大人をもっと頼りなさい」
目暮警部は前を向いたまま語る。
「それに、今日はこどもの日だからね。君、おとなしく甘やかされなさい」
そう、今日は五月五日。
工藤君の肩の力が抜けた。
肩が震えてる。笑ってるみたいだった。
ずっとホールドしていた腕をあたしもやっと緩める。
「ふふ、もう、無茶苦茶ですね。でも、ありがとうございます」
気を張らない、自然な高校生らしい笑いだった。
「誕生日おめでとう」
「おめでとう、いつもありがとう工藤君」
「おめでとう!」
happy birthday!!!
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おまけ
「まあでも、深夜に未成年を連れ回してるのもどうかと思いますけどねー」
「高木君、ちょっと黙ってくれる?」
「ハイ、スイマセン・・・・」
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