04/29の日記

02:58
小話 ーぼくら、いつか大人になるー
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『ぼくら、いつか大人になる』



5月の風が、オレの癖っ毛を掻き乱す。
公園の葉桜が、ザワザワと騒いだ。
相談があると言っていた小さな友人は、硬い表情でそれをオレに打ち明けた。

「アメリカに来ないかって、言われてる」

何も言わないオレに、風で聞こえなかったと思ったのか、ご丁寧にコナンはオレの目を見て繰り返した。

「快斗、オレはアメリカに行くよ」

「・・・・ニューヨークの両親のトコに行くのか?」

いいや、違う。細い首を振ってコナンは否という。
木漏れ日がせわしなくかたちを変えて反射する。

「FBIの証人保護プログラムを受けるよ」
「それって、」

「ああ、江戸川コナンはいなくなる。違う人間になるんだ」

「何だよ、それ。今さら言うのか?」
「ああ、ホント今さらだな」

「・・・・・・・・快斗、十年経っちまった」

あの頃の工藤新一に、十七歳の江戸川コナンが追い付いてしまった。
組織のこともそのまま平行線で、時折蘭や博士、灰原を危険に巻き込む。

「ケリをつけたいんだ。保護プログラムを受けてFBIを利用する。組織をぶっ潰すために」
コナンは、足元の汚れたつま先を眺めて言った。
けれど、見ているのはきっともっと先の現実だった。


「もう、オメーが決めてんならしょうがねぇ」

もう、こうなったらため息しかでない。
コイツの意志の強さは身を持って知っている。

小さな友人の頭をなでる。十年間何度もしてきた行為。
コナンの背が伸びて、オレもすっかり大人になった。

「江戸川コナンは、居なくなるのか?」
「ああ、工藤新一も、居なくなるんだ」

木漏れ日が反射する。
さらさらと葉音。


「快斗、なぁ、快斗・・・・泣くなよ」
「・・・・だってオメーが、可哀想だよ」

「オメーは、相変わらずハートフルだな」
苦笑いした、コナンをぎゅっと抱きしめた。
細い、けれど大人になろうとしている身体。



「快斗、オレは、オレだよ。誰になってもオレだよ、だから良いんだ」
悟ったように自分に言い聞かせて。微笑んだ。

ああ、笑うなよ、オレに向かってそんなふうに笑わないでよ、コナン。



「忘れねぇ、オレが覚えてるよ。新一とコナンのこと」

忘れる奴なんていねーよ。みんなオメーが、好きだったよ。



「なあ、また、会おうぜ」
「ああ、約束する」

ーその時は、ちゃんと笑うからー



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ストライカーの歌詞から。
映画記念を書こうと思ったのですが、去年だしね。


なんだかすいません、すいません。

ちゃんと校正して小話に上げ直したいです。
コナン、帝丹高校二年生。
快斗、フリーランスのマジシャン(怪盗続行中)

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4月29日(月)小話に移動しました。






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