09/18の日記

16:49
小話ー月の鏡ー快新(殺伐)
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“悪い名探偵。今夜は会えなくなった。”

軽い着信音と共に開いたメールには、恋人の何とも味気ないお断り。
「何やってんだ、あのバカ」
思わずそう呟いたオレを、いったい誰が責められようか。

― 月の鏡―

月がきれいだから、デートしようぜ新一。
あいつが携帯越しに、歌うような声をかけてきたのは、学校が終わるそんな頃だ。
「バーロー、こんな時間にかけやがって」
「今、ホームルーム終わっただろ?なあ、きれいな月だぜ?」
「いままだ昼間だろ、つか普通に盗聴すんな」
「新一〜」
珍しく熱心な声。興味を引かれ窓越しに晴れ渡った空を見上げれば、冴え冴えとした月の鏡。
「ふうん、満月か?良いぜ、ただし夜だ。迎えに来いよ」


そう、あいつが来るのを待っていたんだ。
月を見ながら、ずっと。なのにこのメールは、ふざけんな。


何があった、何処にいる。
黒羽快斗も、怪盗キッドも一級のエンタティナーだ。約束を反故するには理由が必ずある。
何が起こった?試しに掛けた携帯は繋がらなかった。

焦燥感にかられ、上着をつかんで立ち上がった。




“待ってろ、待ってろよ”
何度も、言い聞かせるように響く声に励まされながら、快斗は路地裏の影にうずくまる。何とか逃げたつもりだ。


「いきなり襲うなんてひでーよな」

貧血でこれ以上歩くのは限界だった。硬いアスファルトよりも体が冷えて辛い。
至近距離でやられた。相手プロだ。

最初からキッドとして狙われていたのだったら対策を考えねば。しかし頭は回らない。
撃たれた足にすべての神経は集約していく。

壊された携帯を握り締め、快斗は息を殺して身を潜めた。


盗聴器に繋いだイヤホンから一方的に語りかける恋人の声だけに集中する。


待ってる、待ってるよ。名探偵。

来るなって言ったって、オメーは聞かねーし。
携帯コレじゃそもそも来るなも言えねーし。

月はキレイだし、

オメーに会いたいし。

その慧眼でオレを見つけてくれよ。新一。


ああ、なんか眠くなってきたな、


目が覚めたらおはようを言うよ、新一

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殺伐ですいません。久しぶりがこれですいません。
同じタイトルで前に書いたと思います。月の鏡、昼間の満月の事です。好きな言葉なんです・・・


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