Vision of the paradise

□第0夜
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そう、彼らは数々のログと言う名の戦場をくぐりぬけてきた。

ラビはその度に名を変えており、本名を捨てている。
48番目のログでの名が「ディック」。
そして今回の49番目の名が「ラビ」。

しいて言うのなら彼の本名はもはや「ブックマンJr」だろう。
全ての彼をとらえられる、ただ一つの名。
なので彼を「Jr」と言う人もいた。

彼女もその中の1人だった。



「集中しろ!次のログは今までみたいに甘くないぞ。」


「・・・・・次のログって・・・・・・?」


「ヴァチカン直属対アクマ軍事機関、黒の教団だ。
我らはそこでこれからエクソシストとなって歴史の闇に隠ぺいされるであろう人と悪魔の大戦を記録する。」



AKUMA(アクマ)
死者の魂と機械を融合した生きる悪性兵器

エクソシスト
アクマを破壊する黒の聖職者(クラーヂマン)


彼らはこれらの戦いを記録するためだけにエクソシストの中に紛れ込む。
ただ、それだけ。

正直のところ、自分たちのいる組織が勝とうが負けようがどうでもいい。
自分たちが生きて、それを記録できればいいのだから。



「まだ悔やんでおるのか?」


「・・・・・なんのことさ?」


「とぼけるな。お前が先ほど向いておったのは例の孤児院があった方角だ。
もう忘れろ。ブックマンに心は要らぬ。どちらにしろ、忘れねばこの先はつらいぞ。」


「わかってるさ・・・・」



そう呟き、船の淵に肘をつき顎をその上にのせる。
その表情は先ほどと同じ複雑な顔だ。



目を閉じれば今すぐにでも聞こえる、あの声。
オレの名を呼ぶ声だ。



「Jr!」



そう言ってオレの方に眩しいくらいに笑ってくれる、ただ1人の女。
短い金の髪は光を、橙色の瞳は暖かさを教えてくれる。

まだオレはこんなにも彼女を鮮明に覚えているんだ。


忘れることなんて



「・・・・・できないんさ。」





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