Vision of the paradise
□第0夜
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―2、3年前
チャプン
1隻の船が水の上を軽やかに進んでいく。
その先端には白のコートを着た者。
フードを目深く被っており顔はよくわからないが、どうやら漕ぎ手のようだ。
ここはとある組織の地下水路。
この船以外は見当たらず辺りは漕ぐ音しかしていなかった。
ガタッ
「・・・・・・・・・・・」
「どうしたラビ?」
この船には漕ぎ手の他に2人が乗っており、今まで眠っていた少年が急に起き上がり、とある方向をじーっと見ているのだった。
少年の名は、今はラビ。
特徴のある緋色の髪と、右目の眼帯、頭のバンダナは彼の目印でもある。
もう1人の老人には名がない。
彼は「ブックマン」と呼ばれる性(さが)の者。
なので彼は人からブックマンと呼ばれている。
目の周りに塗られている黒、ラビ曰く「パンダメイク」が特徴的だ。
ちなみにラビはその「ブックマン」の次期後継者である。
「ラビ、ラビ!」
ブックマンの呼ぶ声に返答はなく、ただ一点の方向を見つめている。
その表情はどこか悲しそうで、懐かしそうで、愛しそうで、複雑そうだった。
「・・・・・ボソッ「ディック」。」
「あ?」
小さな声である名前を呼ぶと、彼は今までのが嘘だったかのように素直に振り返る。
その行動にまるでブックマンはパンダの手のように左手を変えラビを叩く。
ゴキンッ
「いってぇ〜っ!!何すんさ、じじい!」
「だまれ、アホ。何をボケーッとしとるか!」
ラビは涙目に叩かれた頭を手で押さえる。
「お前は今「ラビ」だろうが!!」
「あ、前の記録地(ログ)の名前で振り返っちゃった?」
「馬鹿モンが!!」
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