Shadow of the dusk
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ーハルジオンの街 魔法屋
「えーーっ!!?この街って魔法屋1件しかないの?」
ある少女の声が魔法屋の中に木霊する。
魔法屋があると聞いてきた少女は「無駄足だったかしらねえ。」とため息をつく。
このハルジオンは魔法より漁業が盛んな街。
街の者も魔法を使えるのは1割もいない。
なのでこの店もほぼ旅の魔導士専門店となっている。
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「(誰か来ているのか・・・・めずらしいな。)」
真っ黒なコートを羽織りフードで顔を隠す、いかにも怪しそうな少年(?)は声を聞き思わず苦笑する。
その姿に通りすがる男女どちらも顔を赤に染め息をのむ。
そしてその視線に気づかない少年は目的地の魔法屋へと向かう。
傍らにため息をつく直立2足歩行のオレンジ色のネコを連れて・・・・
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少女は探していた門(ゲート)の鍵「白い子犬(ホワイトバギー)を見つけ目を輝かしている。
買おうと思い店主に「いくら?」と笑顔で値段を聞くと
「2万J(ジュエル)。」
「お・い・く・ら・か・し・ら?」
「だから2万J。」
あまりの高さに再び店主に聞くが無情にも値段が変わることはなかった。
そして少女は最終手段に出る。
体を屈み胸の下で腕を組み、胸を強調させる。
「本当はおいくらかしら?ステキなお「親父さん、いるかー?」」
突然の訪問者に台詞を遮られる。
しかも、決め台詞だったようだ。
「おお、イヴじゃないか!!」
「久しぶりだな、親父さん。」
更に店長はそのまま訪問者の方へ向かい少女は1人ポツンとむなしく立っていた。
「(もぉ、誰よ!あたしのお色気作戦を邪魔する人は!)」
振り返ってみるとそこには全身黒ずくめの少年らしき人が店長と仲よさしげにしゃべっていた。
普通の人は彼を間違いなく怪しい人だと思うだろう。
しかしこの少年は違う。
時折フードの隙間から見せる顔、そう俗に言う美形とやらの部類に入っているのだ。
少女の動きは少しの間止まった。
「(な・・・めちゃくちゃカッコイイじゃない!!)」
「あのー・・・」
自分の世界に入り浸っていた彼女を起こす声は彼女の足元から聞こえてきた。
そこには斜めがけバッグを持ったオレンジのネコが少女を見上げていた。
さらにそのネコは
「(・・・・っ、カワイイーーー!!)」
口元を両手で隠して少女は心の中で叫ぶ。
声の高さから♂だとわかるがあまりにも容姿がカワイイすぎると、少女は思った。
「あの・・・」
彼女の様子に不信感を感じながらネコは恐る恐る尋ねる。
「あ、ごめんね・・・でお姉ちゃんに何か用事かな?」
ついついその容姿から子供に向ける言葉になってしまったが、相手は気にしないのか笑顔で話を続ける。
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