短いお話-よんアザ

□ある寒い日のお話
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※恋人設定

歩くたびに雪のしゃり、しゃり、という音がする。冬だけの、心地良い感触。
その代わりに指先はひんやりと冷たくて、まぁ、これも冬の醍醐味というべきなのだろうか。
今日は芥辺さんと久々にデートをした。今はその帰り。
最近彼はやけに仕事が多かったから、デートなんて1月ほどしてなかった。

『今日は、楽しかったですね』
「…ああ。」

時間もそんなになくて、したことといえば食事とお買い物だけだったけど、それはそれで楽しかった。

『そういえば、事務所の方は大丈夫何でしょうか…佐隈さん、きちんと仕事できたのかなぁ。』
「…」
『芥辺さん?』

先程から芥辺さんが静かなのが気になる。今日は短い時間でいろいろ回ったから疲れたのだろうか。

『疲れたなら、早く帰って休んだ方がいいですね。ちょっと急ぎましょうか』
「いや、いい。」

芥辺さんのコートの袖を引っ張って、早く進むよう催促する。と、今度は私が引っ張られ再び隣に並んだ。

「今日は…」
『…?』
「…デートは、帰るまでがデートだから。」

そういうと、芥辺さんは私の左手を取って自分の右手と繋がせた。
私の手よりも大きなそれは、こんな寒い中でもなぜかとてもあったかくて。

「だから、ゆっくり帰ろう」
『…それって、遠足みたいですね。』

うるさい、という芥辺さんの言葉を聞きながら、とてもほかほかした気持ちになった。

ある寒い日のお話

(でも、恋人つなぎはまだ早いみたい。)

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