APH小説

□こんな日和も
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「エートまずお茶の葉・・・・」

フェリシアーノは、棚の引き戸から缶に入ったお茶っ葉を出して二人分より少し多めに急須に入れた。

「あ フェリシアーノくん」

お湯を沸かそうとすると、菊が突然呼び止めた。

「お湯は、ポットに入っているのでそれ使ってくれればいいですよ。」

「へえ〜便利だねー」

そして急須に湯を入れて約1分待つ!

フェリシアーノはおぼんに氷の入ったコップと急須をのせて居間に運んだ。

「ふふ、フェリシアーノくん、様になってますよ」

「えー奥さんの手伝いをさらりとやっちゃう優しい亭主みたい?」

「そこ亭主ごり押しじゃなくてもいいんじゃないですか?長いですよ」

「いやあ、菊は絶対お嫁さんだから!!」

「はいはい、さあようかんでも食べて熱を冷まして下さい。」

「菊が冷たいよー!俺の熱分けてあげようか」

「もう少し寒くなってからなら考えておきます。」

にこりと笑って返す菊。
それにちょっとショボーンとなるフェリシアーノ。
しかしすぐに気を取り直し、冬ならいいんだよね〜なんて呟きつつお茶をコップに注いだ。
二人分を注ぎ終わるのを待って、菊はコクリと冷えた緑茶を飲んだ。

「あー・・・美味しいです」
火照った身体には冷たいものが余計に嬉しい。

「うん、上出来!リョクチャって、優しい味だよね」

「へえ、フェリシアーノくん初めて飲んだ時、すごい渋そうな顔してましたけど・・・成長しましたね」

「へへー俺日本にけっこう慣れてきたよ!もうこっちに住めるね」

「毎月のように休みもぎとって来てるんだからあんまり変わらないんじゃないですか?」

「それがさ、上司も交通費バカにならないから住んじゃいなさいってこないだ言われちゃった」

しれっと言い、水まんじゅうをほおばるフェリシアーノに菊は思わず呆れた顔をした。

「・・・まさか、社費でいつも来てるんですか?」

「・・・・国際的な交流には上司も口出しはしないんだよ〜」

にっこりと笑顔なフェリシアーノだが、その雰囲気からは腹黒さがかいまみえる・・・・・
菊は、なんだかイタリアの経済がこのせいで圧迫されていないかとても心配になった。

「フェリシアーノくんが日本のこと知ってくれるのはとても嬉しいんですが、私も、イタリアのこと知りたいんです。今度は、私がフェリシアーノくんの家に行きますね」

すると、フェリシアーノは少し驚いて、「本当に?!」
と言って目を輝かせた。

「嬉しいなあ俺今日来てよかったー!」

思いのほか喜ばれた菊も少し驚いていたが、既にイタリア観光の話をしてはしゃぐフェリシアーノを見て、つられて笑顔になった。


普段は慌ただしい自分も、この人といるとまるで時の流れが違う。と、菊は思う。

恋人とゆったり過ごす昼下がり。

たまには、こんな日和もいいものだと、ようかんを一口かじった。

庭にある、小さな落葉松の木の最後のせみが、夏の終わりを告げていた。


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