ぶっく1

□深夜のコンビニは暇すぎて
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夜のコンビニなんて暇すぎる。


「好きです」
「付き合ってください」


だからってこんな刺激は必要ない。


「590円になります」

「あ、はい」


暇は暇で楽だし面倒なことないし。
普通に過ごすのが一番だって最近気づいたのに。なにコレ。


「10円のお返しです」
「ありがとうございました」

「ってあのー」
「好きなんです」
「付き合ってください」

「あ、さっき聞きましたよ」

「そうですか、よかったです」
「…ってよくないっす!」


なにこの人。
深夜にノリツッコミとか。
そんな元気ないよ、おれ。


「一目惚れってヤツですかね」

「知りません」

「俺、初めてです、一目惚れ」

「おめでとうございます」
「もういいですか」


刺激にもなったし。
客もいないから品出ししたいし。


「だめです」
「あなたに惚れたんです」

「おれ、イケメン嫌いなんで」

「うっわ、俺のことですか」
「ありがとうございます!」


深夜にもなるとおかしな客も来るんだな。
小さな発見。
明日から気を付けよう。


「だいたい、アナタ一目惚れされる方じゃないんですか」

「まあ、そうですね」
「だから初めてなんです」


…なんかむかつく。
これだから顔が良い男は。


「番号、教えてください」

「教えません」

「ど、どうしたら教えてくれますか」


なんだこれ。
いきなりあたふたし始めた。
これは、もしや。


「自分から聞いたことないんだ?」

「…ば、ばれた、」


なーんだ。
かわいいとこあるじゃん。
ま、でも教えないけど。


「とりあえず店から出てくれたら考える」

「ほんとですか!」
「じゃあ外出ますね!」


すんなり出てったイケメンくん。
あんなにかっこいいなら男女問わず飽きるほどいるだろうに。
地味に学生やって深夜はコンビニ店員のおれなんかにちょっかい出す意味がわかんない。


「お先に失礼しまーす」


バイトが終わって朝六時。
店を出ると小さく丸まったさっきのイケメン。
寒すぎて凍死してる?


「あの」


肩をつんつんしながら生存確認。
頭が動いたから一応生きてるみたい。

 
「…ぅあ、まるやまさん、」

「なんで……ああ、」


名前知ってるのも当然か。
それより大丈夫?この人。


「ずっと待ってたの?」
「ばかじゃない?」

「…いけめんでバカはだめですか、」

「だめです」


眠ってたらしく目はとろんとしてる。
まだ眠たそう。
てか風邪ひいちゃうよ。


「とりあえず早く帰りなよ」

「番号、教えてくれるって…」

「言ってはないけどね」
「まあいいや」
「はい、あげるから早く帰って」

「やった、!」


感謝の言葉ととびきりの笑顔を残して去っていったイケメンくん。
変な一日だったな。
こんな刺激が強い生活は二度とごめんだ。




















「照美さん!」

「また来たの…」


暇だね、相変わらず。
あの日からこのイケメンくんが来るせいでおれの日常は変わってしまった。


「照美さん」
「なんか食べます?」
「買っときますよ」

「いや、いいよ」
「終わるまであと二時間もあるし」


暇すぎた深夜のコンビニはバカなイケメンの相手で忙しくなった。


「てるみさん」
「好きです」
「付き合ってください」

「いけめんは嫌いって言ってるでしょ」
「まあ、でも」


イケメンのくせに純粋で。
ばかで。おっちょこょいで。チャラくなくて。かっこつけて失敗して。
そんなイケメンは、嫌いじゃない。


「照美さーん!」
「付き合ってくださいよー」

「いけめんじゃなくなったらね」

「えー!」




 
 










    忙しいコンビニ










「じゃあ俺整形してきますね!」

「…それはやりすぎ」











080213.27
 

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