ぶっく2

□帰宅は7時
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「ただいま」
「……!、…おかえりなさい」
「どうした今日は」
「いや、あの、」
「…ぼーっとしてました」

午後六時五十二分。
いつもは玄関先で俺の帰りを待っててくれる妻が今日はドタバタ音をたてながら迎えてくれた。
アザになる前にちゃんと冷やせよ。



「お、ハンバーグか」
「はい」
「やっぱり俺の妻だな」
「…どうしたんですか」
「ありがとな」

七時十六分。
すごく嬉しそうにこんなこと言うなんて言われた自分の方が恥ずかしすぎる。
…こら、黙々と食べるな。



「奥さん」
「はい」
「こっちおいで」
「……」
「なんだその顔は」

七時三十四分。
少し間を置いて今日はデザートもありますよと言いながらキッチンへ足を向けた妻。
おい逃げるな。



「風呂にする」
「沸いてますよ」
「おまえも入るか」
「何をおっしゃってるんです」
「なんてな」

八時三分。
朝からおかしいとは思っていたけどいつからこんな冗談をかますようになったんでしょう。
内心緊張で心臓バクバク。
こんな旦那さまは知らない。



「明日は雨か」
「朝から大雨みたいですよ」
「遅延かな」
「嬉しそうな顔しちゃだめです」
「顔に出るのはいいことだ」

八時四十五分。
台風でも来て会社が休みになれば妻と久しぶりにゆっくりできるのに。
いっそのこと休んでしまおうか。



「じゃあ電気消すぞ」
「はい」
「もうちょっとこっちに来い」
「暑苦しくなりますよ」
「おまえの体温を感じてたい」
「…寒いからですね」

十時四十七分。
間をあけて返答するのが精一杯で頭は真っ白、顔は真っ赤。
こんな自分も知らない。
誰かこの心臓、止めて。





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