戦国
□閃
1ページ/1ページ
それは一瞬に輝く命の如く
「なぁ長秀。長秀はなんで"閃"の字を選んだんだ?」
我ら上杉に集う者は、戦場に立つ時それぞれに己の信念を一字に込めて掲げる。
俺は"仁"を目の前の彼は"閃"を
その字に込められた意味を、いつか聞いてみたいと思っていた。
「うーん、たぶん朝信ほど格好いい理由じゃないぞ?」
「おいおい、自分で決めた信念だ、そんな事はないだろ。"閃"だと、"閃き"とか"閃光"とかパッと思い付くのはそんな感じだが」
「そうだな。俺もそんなイメージに近い」
「じゃあ、他人より一際光輝くとか、そういう意味か?」
「いや…、それとは少し違うかも」
「違う?」
「ああ。人の人生は短い、いつどうなるかもわからない。でも俺は最後の一瞬まで輝けるような男でありたいんだ。だから、この字がいいかな、と」
「へぇ、格好いいじゃないか」
「そ、そうかな。朝信にそう言ってもらえると自信出るな」
そう言って笑うアイツは純粋に嬉しそうで
だから俺も、笑みで返した。
最後の瞬間まで上杉のため、掲げた覚悟の元に戦地を駆ける。
「(そんな、武士の鏡みたいなお前だけど)」
お前は根っからの優しいヤツだから
どうか無事に帰って来てくれ、なんて愚言を俺が伝えたなら、
きっと、困ったように眉を下げて笑いながら、それでも、わかったと言ってくれるんだろう。
だから俺は、そんなコトはぜったい口にしない。
どこまでもまっすぐで、どこまでも不器用で、どこまでも律義なお前を
嘘と後悔で汚したくないから
.