戦国

□閃
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それは一瞬に輝く命の如く






「なぁ長秀。長秀はなんで"閃"の字を選んだんだ?」

我ら上杉に集う者は、戦場に立つ時それぞれに己の信念を一字に込めて掲げる。

俺は"仁"を目の前の彼は"閃"を

その字に込められた意味を、いつか聞いてみたいと思っていた。


「うーん、たぶん朝信ほど格好いい理由じゃないぞ?」

「おいおい、自分で決めた信念だ、そんな事はないだろ。"閃"だと、"閃き"とか"閃光"とかパッと思い付くのはそんな感じだが」

「そうだな。俺もそんなイメージに近い」

「じゃあ、他人より一際光輝くとか、そういう意味か?」

「いや…、それとは少し違うかも」

「違う?」

「ああ。人の人生は短い、いつどうなるかもわからない。でも俺は最後の一瞬まで輝けるような男でありたいんだ。だから、この字がいいかな、と」

「へぇ、格好いいじゃないか」

「そ、そうかな。朝信にそう言ってもらえると自信出るな」

そう言って笑うアイツは純粋に嬉しそうで
だから俺も、笑みで返した。









最後の瞬間まで上杉のため、掲げた覚悟の元に戦地を駆ける。


「(そんな、武士の鏡みたいなお前だけど)」


お前は根っからの優しいヤツだから


どうか無事に帰って来てくれ、なんて愚言を俺が伝えたなら、
きっと、困ったように眉を下げて笑いながら、それでも、わかったと言ってくれるんだろう。


だから俺は、そんなコトはぜったい口にしない。


どこまでもまっすぐで、どこまでも不器用で、どこまでも律義なお前を




嘘と後悔で汚したくないから






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