□お題
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ついったぁでお題みたいなのあったのでやってみた

張苞関興への3つの恋のお題:
1、振り向いた君を強く抱きしめた
2、ずっと隣で笑っていて欲しい
3、抱きしめて、キスをして


・・・・・・・・・・

お題1


「関興ーー!」
庭に面した廊下の突き当たりに差し掛かった時、
明らかに距離を測り違えた音量が廊下中に響く。
それが誰なのか、なんて
考えるまでも無さすぎて






「はぁぁあぁぁぁぁーー…」
存分に重っ苦しいため息をだだ流しながら、やるせない心のもやを吐き出しているのは、いつも空元気なのが取り柄のハズの張苞その人である。
その憂鬱の理由は至極単純明快

  関興と喧嘩をした

それに尽きる。いやもう、それしかない。
しかも今回はその場で丸く収まらず、関興に口をきいてもらえなくなるパターンときた。

「…だってアイツ、なんかイライラしてたし…」

そんなときにわざわざ突っ掛かっていくのが苞兄だよね。と張姫から言われる始末なのだが。
張苞は涼しい木陰の、ひんやりとした岩の上に胡座をかいたまま、考える。
そうして冷えた頭がやっと『自分に非がある』と認めたところで納得し、岩から降りると迷い無く足を踏み出した。

決まったら即行動。速く速く、と歩みはいつしか駆け足に変わった。上がる息をよそに見慣れた姿を探し回る。

もし、謝っても許してもらえなかったらどうするか、なんて思考は張苞の頭には微塵も無い。

理由なんて知れたことで、しかしそれは確証なんて無いことで。

いや、確証ならあった。

もし本当に嫌いなったというのなら、こちらの呼び掛けになんて、素直に反応してくれるわけない。

だから


『振り向いた君を強く抱きしめた 』


(ごめんな興。俺が悪かった)
(いや、…俺の方こそ、ごめん)





・・・・・・・・・・・・・

お題2


「にしても、興があからさまにイライラするなんて珍しいよなー」

なんて呑気に喧嘩の原因をほっくり返してくる張苞に、関興も至って呑気な声で、そうかー?なんて返す。
それはさっきようやく仲直りしたとは微塵も感じさせないやり取りで、むしろいつもより引っ付いて離れない張苞を、関興もそのままにしていた。

「興が調子悪いと俺も調子狂うぜ」
「だからって喧嘩売ってくんなよ」
「売ってねぇよ、興のを買ったんだやい」
「なんだそれ」

いつもながら張苞の持論はたいてい意味がわからない。

「だいたい、俺が機嫌悪いのわかってんなら放っといてくれよなー」
「えー、それは無理な話だぜ興」
「なんでだよ」

からかわれてるのかと、ちょっと声に力を込めつつ張苞の方を振り返る。
瞬間、目が合う。挑発的にではなく、ニッと幸せそうに笑う瞳と。予想外な表情に一瞬身を固めると、その唇は、だってさぁと言葉を続けた。


興にはさ、俺、

『ずっと隣で笑っていて欲しいんだ』


だから、興がイライラしてると見過ごせないんだよなぁ。なんて言って、笑う。
そんなのお前だけだ、とか。ただのありがた迷惑じゃねぇか、とか。
いつもの冗談返しは、こんな時に限って出て来なくて。

代わりに、頬がやけに熱を持つのがはっきりわかった。




(あれ?興なんか耳赤くね?)
(う、うっさい!///)
(…キスしてもいい?)
(っ!…馬鹿苞っ!)







・・・・・・・・・・・・


お題3


「だからさぁ、興が落ち込んでる時は俺もなんか力になりたいわけよ」

な、とやけに真剣モードで顔をズイッと寄せられる。
まだその話を考えてたのか。すっかり傾いた陽射しの中、半場呆れながら関興は体を引く。

「なのに、なんで俺にはあんま相談とかしてくれないんだよ」
「あー…だって苞に迂闊に相談すると、余計にややこしくなるじゃん」
「ならねぇよ!」
「余計なコトはするだろ」
「余計なコトって、何だよ」
「例えば、俺が対人関係で悩んでると、相手側に殴り込みに行ったりとか」
「うっ……」

さすがの張苞も、あれはやり過ぎたと思っているらしい。剣幕が大人しくなった。

「じゃあ、どうしたらいいんだよー」

むすっとしながらも、先ほどよりはるかに小さい声で張苞が文句を言う。
そう言われてもだ。関興は思う。

どうしたらいいか、なんて

そんなどうこう出来るほど、お前って器用だったっけ?


「うーん…別に、なんつーか…何かしようとしてくれるんじゃなくて、いつも通りの苞でいてくれれば、それでいいんだよなー」
「いつも通りの俺?」

いつも通りの俺ってどんなんだっけなー。と再び真剣な顔で悩み始めた張苞。その大げさっぷりが、いや本人は至って大真面目なのだろうが、それがわかっていてもちょっと可笑しくて。

「ぷっくはっ、はははっ」
「うん?おい、なんで笑うんだよ!」
「いや、だってお前ホントに悩んでるから」
「しょーがねぇだろ!普段通りなんて意識したことないぜ」

大真面目だった張苞は再びバツが悪そうに口を尖らせた。
それに関興はなるほど、と同意しながらも再び笑い出した。


そんなに悩まなくてもなぁ、と関興は思う。


そのまま、いつも通りに


俺の名前を呼んで

抱きしめて、キスをして

いっしょに居てくれて


それだけで、十分なんだ。



「ホント、苞は見てて飽きないからいいよな」
「なんだそれ、どんな理由だよ」
「いっしょに居るだけで面白いってコトさ」

ふうん、と納得したんだかしてないんだかわからない返事が返ってきたと思った、直後。
頬に柔らかい感触。

ちゅっと唇で小気味よい音をたてて離れる、張苞の顔。

「俺も、関興と居ると楽しいぜ」

なんて、満面の笑みを浮かべるその顔に
渾身のデコピンで応酬した。




(…やり返すならキスでくれよ)
(するかっ//)





-了-


2012/9/4

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