魏・漢

□見つめているのは果たしてどちらか
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「攸ちゃん、終わった?」

「え?あぁ、これで終わりですよ…っと。」

ハタと思考を現在に戻して、はい、と腕を解放してやると、ホウ徳は心底嬉しそうにありがとさんと言って包帯を撫でた。
今では彼の笑顔がこんなにも近い。
そして、自分も手当てをするのが格段に上手くなってしまったと思う。

だが、ここはやはり。


「やっぱり私では心配ですね〜。薬師の方に頼んで見てもらいましょう。」

「えー!!いいっすよ別に、ちゃんと巻けてるじゃないッスか!!十分十分。」

「我が儘言わない。…しょーがないですね〜。私もいっしょに行きますから。」

「本当ッスか!?んじゃ行きますっ!!」

「おっとと!いきなりひっ付かないで下さい!!危ないじゃないですか。」


いやはや。
素直なんだか素直じゃないんだか。

いや、彼は自分に素直なのか、と心の中で一人ごちする。




彼は変わった。
いや、もしくは元に戻ったのかもしれない。
そんなの自分には知る由も無いが、取り敢えず良かったと思う。

今や彼は軍のムードメーカーであり、要の一つだ。
彼の周りにはいつも人が居てとても賑わっている。

戦場を駆ける姿は、前よりも凛々しく、勇ましくなった。
だが、以前よりやらかす事も多くなったとはこれ如何に…。


(そう言えば郭嘉殿は、昔の方がおとなしくて良かったと愚痴っていましたっけ。
まぁ本心では喜んでくれているのが丸わかりなんですけど。)



その後、二人は結局いっしょに部屋を出て、薬師の所へと歩きだした。

荀攸は自分に速度を合わせて隣を歩くホウ徳を静かに見上げる。
身長差のため遥か上にあるその顔は、清々しい程に晴れ渡っていて、今は嬉しそうに笑顔が浮かぶ。


自分がわざわざホウ徳の手当てに来る理由。

考えてみれば簡単な事なのかもしれない。







きっと私は、




貴方が初めて見せてくれた笑顔に、





参ってしまったに違いない。















〈見つめているのは果たしてどちらか〉






(いやはや、参りましたなぁ〜…)


(??)


















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