まつくろけの猫が二疋

なやましいよるの屋根
のうへで

ぴんとたてた尻尾の
さきから

絲のやうなみかづきが
かすんでゐる


『おわあ、こんばんは』

『おわあ、こんばんは』

『おぎやあ、おぎやあ、
おぎやあ』

『おわああ、ここの家
の主人は、病氣です』



萩原朔太郎『月に吠える』
より

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