或る愛の物語

□亡くしたはずの愛
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爽やかな陽気が続いていたのに天気予報のお姉さんが梅雨入りしましたと言った今日、まさに天気はシトシトと雨が降り注いでいた。


「いよいよ梅雨入りかぁ」


週間天気予報も雨を示す傘マークと曇のマークで埋めつくされていて溜息が漏れた。

衣替えはしてるけど梅雨の時期って梅雨寒って言葉があるように冷える時があるんだよね。気温も朝晩と昼とではまだまだ差があるし。

ふぅっと息をついて私はソファーに体を沈めると壁に掛けられた時計をチラリと見上げる。本当なら出勤の支度をする時間だ。

テーブルの上に置いてあった営業用の携帯を手にすると、馴染みのお客様に今日から1週間ほどお休みを貰った事をメールする。

休みをとった理由は…これといってなかった。
体調が悪いわけではないし休まなくてはいけないような用もない。でも、それでもどうしても私はお店に行く気になれなくて。
考えないようにしていてもオーナーとの情事中に香った理沙ちゃんの香水がどうしても忘れられないし、芹沢さんに言われたオーナーの色管の話しも頭から離れず私を憂鬱な気持ちにさせて行く。

休む理由はこれと言ってない、でも気持ちがついてこないから休みたいなんて言ったら怒られるだろうなぁと考えたけど、嘘をつくのも嫌だったから斎藤店長にそのまま相談したのだ。理沙ちゃんやオーナーの事は伏せてフロアに立てる気力がない、と。

店長は話す私の様子をジッと見てから「あんたに休まれるのも店として困るのだが……いいだろう」と怒ることもなく許可してくれて。

本当にありがたくて何度も斎藤店長にお礼を言った。

オーナーには店長が話すだろう。どうしても何故かオーナーと話す気にならない。

思えば1週間もの休みなんて前職を辞めた時以来だ。

「1週間何しよう?」

もっと計画的に休めれば旅行とか行きたかったなぁ。静かで趣のある旅館とか泊まりたい。
テレビからはタイムリーに温泉宿特集が流れててボーッとしながら眺めていたら、プライベート用の携帯が軽快な音を鳴らして着信を知らせた。
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