或る愛の物語
□物語の始まり
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「ねぇ、千。今夜はどこに遊びに行く?」
土曜日の夕方、早めにシャワーを浴びてネイルをチェックしながら親友の千と今夜の予定を電話で立てていた。
「プリクラ撮りたいからゲーセン行って…後はその時のノリで決めよっ」
電話越しに明るく返ってきた千の声に私は笑みを浮かべた。
私――篠崎奈理子は只今絶賛失恋傷心中。
3ヶ月前に2年付き合った千景に振られてしまい、恋愛依存気味になるくらい好きだったからもう立ち直れないくらいまで落ち込んだっけ。
今でも辛いけど時間が痛みを和らげてくれて、私は少しずつ元気を取り戻していた。
それからは遊び好きな千とよく遊ぶようになって決まって週末はわざとナンパをされに街へ遊びに出掛けている。
自暴自棄になりかけてるのか正直いろんな男の人と話しをしたり、ちょっといいなと思う人とキスしたり…最後までさせなくても胸くらいは触らせちゃったり。
軽い女と自分で思いながら、その時限りの温もりで寂しさを埋めているのかもしれない。
「つまりいつものコースってことね。じゃあとりあえずいつもの待ち合わせ場所で」
千の「おっけ〜」と言う返事を聞いてから通話終了ボタンを静かに押すと、今夜はいい出会いがあるかなと私はいそいそと髪を巻きはじめた。