硝子の物語

□貴方を、欲す
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料理をする手つきが、厭らしいと思ったのは、ごく最近のことだ。

「な〜み〜すぁ〜ん❤ろぉ〜びんちゅぁ〜ん❤」

女の名前を下心丸出しで呼ぶアイツの声を、苛立たしく思えたのは、もう少し前から。

その頃はこの胸のモヤモヤや、高鳴りが、どんな意味を持っていたのかなんて、まったく気づきもしなかったけど…

男だからって、雑に扱われた時なんか、ものすごい泣きそうな気分になった。

でも言えるわけない

好きなんて。



見張り番をしている、ゾロの背中をぽんと叩く。

「よぉ、寒くないか?」

ゾロは声のしたほうに視線をずらし、強張っていた顔を緩やかな表情に変えて、包まっていた毛布の裾を片手で広げた。

「寒くねぇ。毛布あるし…入るか?ルフィ」

「しししっ」

のそのそと四足歩行で移動し、ゾロとおんなじ毛布に包まった。

「あったけぇ…」

そう言いながら、ゾロは俺の顔を見つめて、そっと唇を近付けた。

プチュッと、唾液が交わる音がして、興奮の色が高まる。

啄ばむように角度を変え、ゾロはルフィに覆いかぶさるようにして倒れこんだ。

「嫌だったら、言ってくれ」

優しい、ゾロ

「ううん、嫌じゃ、ねぇ…」

利用してるって、気づいてる?

寒くて少し悴んだ手が、ルフィの頬を軽く撫でて、首に、鎖骨にあたり、胸に移動してゆく。

ルフィはピクリと体を揺らし、胸の突起を触られた瞬間、腰を大きく仰け反らせた。

「ここ、そんなにいいのか?」

「っ、うんっ、うん…」

くりくりと指と指の間に挟まれて、固くしこりを持ったソレは、紅く紅潮し、全神経を刺激する。

「気持ぃっ、よ…うっ」

(サン、ジ)

ゾロの表情が、余裕無さ気にルフィをじっと見つめる。

「ルフィ、可愛い」

目を瞑れば、彼が囁く。

『ルフィ、可愛い』

薄く目を開くと、緑の髪に、耳たぶにぶら下がっているピアスが揺れた。

「…っ」

またぐっと目を瞑ると、ルフィの名前を優しく呼ぶ、金色の髪をして、煙草を吹かす、彼の、姿。

指が優しく、腹をなぞって、ルフィのズボンに手をかけると、スルリとすべてをずり下ろした。

固く仰け反った陰茎をくっと掴まれ、ルフィは軽い悲鳴を上げる。

「ルフィ、…」
『ルフィ、…』

あ、だめだ。照らし合わせてしまう。

「ゾロ」
(サンジ)

言葉とは裏腹に、脳内では目の前のゾロとは違う、サンジと、SEXしてる。

ゾロは優しい。

そこに、漬け込んだ。

ごつごつした指が、ルフィの尻の肉をかき分けながら侵入してくる。

「あぁっ、く…」

快感に身悶えしながら、ゾロの背中に腕をまわした。

顔を見ないで、済むように。

酷く残酷な俺を、知ってか知らずか、ゾロは優しくしてくれる。

指先がルフィの前立腺にあたり、大きく声を漏らす。

「あああぁぁっ!や、ぅ…」

ゾロの愛撫によってとろとろに蕩けたそこは、あっけなくゾロの太く仰け反った陰茎をいとも簡単に飲み込んでゆく。

「っ、く…」

「やあぁぁぁっ!あぐっ、うぅっ」

奥を突き上げられては、イきそうになったらまた引き抜かれる。そんなもどかしい動きに耐えかねたルフィは、自ら腰を動かし始めた。

「も、っと、突けよぉ…っう、ん、んっ」

「ヤラシイな、ルフィ…」

壊せよ、俺は汚い人間だ。

「ルフィ、好きだ、好き、だっ」

そんな愛の言葉を囁かれたって、俺の耳には届いていない。

(サンジ、好き、俺も、サンジ…、好き)

ぶち壊してくれ。



事も終わり、隣で寝息を立てるゾロを見る。

伏せられた瞼に、柔らかい笑みを浮かべた彼を見ると、酷く残酷なことをしたんだという罪悪感がルフィを襲う。

「っ…どうしろって、言うんだよっ」

両手で顔を覆い隠し、浮かんだ涙をぐっとこらえた。

空に訴えた答えは返ってくるでもなく、星は痛いほどに輝きを増して、自分の卑劣さに絶望した。

もう一度、ゾロを見つめると、自然とサンジの顔がゾロと重なって、ルフィの瞳から涙が零れ落ちた。

どんなに自分の感情に嘘を吐いても

どんなに忘れようとしても

体は、心は、置き去りのままで

ゾロと重ね合わせた肌の数だけ、またアイツが愛おしくなる。

投げかけられた愛の言葉が、心の奥に突き刺さって、また俺を傷つける。

自業自得だって、わかってる。

何度も背いたこの感情は、昔よりも大きくなって、乾いた心が悲鳴を上げる。



貴方を、欲す―…

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