硝子の物語
□そんなひとコマ
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広がった青い海に、カモメが頭上を飛び交う、よく晴れた昼時。
天候も穏やかで、麦わらの一味たちにとっては久しぶりの、のんびりした時間だった。
「…くぁっ…」
ルフィは、眠たそうに薄く眼を開いて、芝生の甲板の上をゴロゴロしながら、小さな欠伸を漏らした。
そんなルフィの隣で、ゾロも波風を感じながら、ウトウトとしている。
「暇ねぇ…」
ナミも、ぼぅっと瞼を重たそうにしながら階段の手すりに頬杖をついた。
そんなクルー達を見かねたのか、ブルックがオズオズとバイオリンを取り出し、静かに演奏を始めた。
「きれいな音色ね」
ロビンがぽつりと呟くと、キッチンから出てきたサンジが、「まったく、同感だ」と相槌を打った。
チョッパーとウソップは、その音色に合わせて体を揺らし始め、またその隣では、フランキーが何故か得意の決めポーズを決めている。
「…ぁ、やべぇ…ね、む…」
芝生でゴロゴロしていたルフィは、ブルックの演奏する優しい音色に包まれながら、静かに眠りについた。
「ヨホホホホ…、こんな無防備な姿で寝ていると、こんな幼い少年に4億の懸賞金がかかっているなんて…、とてもそうには見えませんね」
ブルックはそう言いながら、楽しそうに演奏を続けた。
「ふふっ、そんなこと本人に言ったら怒られそうだけど、その通りね」
ロビンはクスクス笑って、すやすやと穏やかな寝息を立てるルフィの顔を見つめた。
「…船長さん、いつもお疲れ様」
ぽつりと呟くと、ルフィが、「にくっ…めし…」と寝言を言った。
頭上を飛び交うカモメ達も、いつの間にか消えていて、辺りは静寂に包まれる。
響くのはブルックの奏でる優しい音色だけ。
波風が頬を柔らかく撫でる。
そんな、日常のひとコマ。