夢語の間
□バッドサプライズ
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「ちょっとぉ、管さーん!」
「んっ?」
僕は相方の管さんを呼び止めた。
20メートルほど走っただけで少し息があがっていた。
僕、まだ26歳なのになぁ…。
管さんはきょとんとした顔をこちらに向けた。
劇場の廊下は僕の声が良く通った。
「どうした向井…?」
ひょうひょうとした管さんの態度に少しイラッときた。
しらを切る気だ…。
僕は眉間にシワをよせて口を尖らせた。
いくら先輩でも相方であるからにははっきり言おう!そう決めていたんだ。
「管さん、また本番前にお酒飲んだでしょっ!」
「えっ、あっ…これには深い理由があってさぁ」
素早く確信をつかれた管さんは凄く動揺した。
僕、そんなに気迫あったっけ…。
自分に驚いていると、間もなく管さんは言い訳をしてきた。
「先輩に誘われたんだよっ!断れないだろ!」
なんだよ、立ち直るの早えーよ。
しかも逆ギレかよ。
管さんはこちらの言い分を聞かずに楽屋に入ってしまった。バタンと勢い良くドアをしめたのがこれまた機嫌の悪さを象徴していた。
僕なんか悪いこと言ったか?正論だよな?
なんて疑心暗鬼になりかけた。
「最悪…。」
廊下に響かぬ声で僕は呟いた。