夢語の間
□キミのスキなコ
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「俺、好きなこできた…」
「…。」
いきなりの又吉の告白に
綾部は黙ってしまった。
まさか又吉から、色恋沙汰を聞くことになるなんて、思いもしなかったからである。
「無視かよ。」
又吉は単調に話し始めた。
まるで独り言の様に…
「昨日な、下町の古本屋でな会った女の子なんやけど、
これがまた可愛くてな〜
こう、ふわ〜としてて
芥川龍之介のなぁ…」
「うるさい!!!」
綾部はイラついた態度で又吉に当たった。
楽屋には重たく静かな空気が流れ、綾部はその態度を隠せぬまま部屋を出ていった。
「なんやアイツ?変なの…
また熟女にでもふられたか??」
二人掛けのソファーに腰掛け、又吉は綾部を心配したが、
またいつもの事だと思って
鞄から本を手に取り読み始めた。そして昨日の事がふと脳裏をよぎり、思わずニヤついた。
「ホンマかわいかったな〜。」