夢語の間

□スプリングドラッグ
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しばらくして俺らを乗せた電車は目的地に着いた。
涙も渇き、不安も消えた俺は、大きく一歩踏み出し、駅のホームへ足を着いた。


「「綺麗…。」」

俺と又吉は思わず声を合わせた。
ホームの先から大きな桜の木が一本みえたのだ。
その桜は満開で、とても綺麗だった。いや特別綺麗に見えたのかもしれない。

「なぁ綾部、まるで桜が俺達のスタート祝ってるみたいやな。」

「そうだな。」


2人は仕事場へ向かって歩き出した。
また涙がこぼれないうちに…。

***


俺は電車を降り、ホームから見える桜の木を眺めていた。
その木だけは七年前と何も変わっていなかった。

「やっぱり綺麗だな。」


「せやなぁ〜」

俺は隣から聞き覚えのある声を感じた。


「お前マジ、神出鬼没すぎ(笑)」

「そりゃどーも。泣き虫の綾部君。」

俺の隣には又吉がニヤケ顔で立っていた。
それを見て、俺の顔もニヤケてきた。

「又吉なんでいるだ?」

「なんでって、俺だって仕事一緒やろ。ホームでお前見つけたんや。」


又吉の理由は最もだったけど、俺には隣に又吉がいたのが
奇跡のようだった―


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