ハンプティ・ダンプティの書庫
□残酷劇―グランギニョル―
3ページ/3ページ
「う、あぁあああっ!」
冬朽蒼は、叫びながら身を起こした。
少年にしては細い体を小刻みに震わせ、蒼は荒い息を繰り返す。
「はあっ、はあっ、はあっ、」
…夢。
夢を、見た。
小学生のころの、それは記憶だ。高校生になってもまだ引きずったままの、【悪夢】だった。
好きな女の子が、死んでいた。
けれど彼女は、自分に向けて何かを囁いたのだ。
…思い出せない。
否。想像はつく。
きっと恨み言だ。突っ立ったままで、何もできなかった自分への、呪詛だ。
「っ!」
胸に溢れるのは、後悔。
助けられなかった、後悔。
蒼は、左腕に爪をたてた。
あの日から、無意識にやってしまう。
おそらく、贖罪。
傷痕だらけの腕は、きっと彼女への捧げものだ。
「ごめん…ごめんなさい…」
蒼は、呟く。
少女のような可愛い顔を、苦痛に歪めて。
夜が――明けた。