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□さねかずら
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鞄に服を詰める手がためらっているのを見て、ジェームズは言わずにいられなかった。
「あのさ、夏休みは僕の家に来ない?」

とたんに顔を上げたシリウスはぱっと口を開けたが、また閉じておいて言葉を発した。
「一度、帰らないとダメなんだ。弟の様子もみたいし」
「ああ、レギュラスっていったっけ?」
「うん」
幸福そうなシリウスの表情に、ジェームズは仲の良い兄弟の図を思い描いた。
「入学はじめの頃、毎週みたいに手紙をもらっていたね」
「だけど、最近は返事がこなくて……なにか病気でもしてるんじゃないかと不安なんだ」
「それなら君の父さんとか母さんが知らせてくれるだろ」
「……そうだな。そうだ」
「僕、会ってみたい。レギュラスに」
レギュラスと耳にする度、ジェームズにはシリウスをそのまま幼くした小さな子供が笑っている姿が見えた。
レギュラスと知り合うことで、ジェームズが知らないシリウスの子供時代を垣間見ることができる気がしていた。


「でっけええ家」
「古いだけ。ジェームズの家は?」
「ここの半分くらい」
シリウスは門をくぐり、家の玄関までのステップを上がった。
「ジェームズ、それ気に入った?」
シリウスが声をかけて、ゴブリンの彫像を腕組みして見上げていたジェームズもステップに足をかけた。
「うちの家、趣味が悪いんだ」
「覚悟しとく」
ジェームズがにやりとして、シリウスの具合の悪さが消えた。


シリウスが帰ることはふくろう便で家族に知らせてある。シリウスはレギュラスが玄関に近いリビングで待っていることを思った。
玄関に立った。今までこんな風にこの場所に立ったことはなく、すぐ隣には扉のレリーフに興味を示しだしたジェームズが依然ふしぎそうな顔をしていた。
シリウスがベルを鳴らそうと手を上げた途端、ジェームズに先を越されベルの音が高く空気を震わせた。
ベルが鳴ってすぐ、派手な音を立ててドアが開いた。
目の前に現れた少年に向かってレギュラス、とシリウスが名を呼び、ジェームズはそれがシリウスの弟であることを知った。
シリウスが冷たささえ感じさせる整った容貌なら、レギュラスは兄と顔の造作は似ていず優しさをにじませていた。
「待ってた、待ってた、待ってた!」
「ただいま。――おい、お帰りは? 痛っ!」
飛び出してきたレギュラスは憎しみをこめてシリウスを睨み、そのすねめがけて足を振りあげた。
「遅い! 2日過ぎてる! 約束破ったな!!」
「いた、た……約束? 馬鹿! それが兄への挨拶か!」
「手紙! おとといには来るって書いてあった!」
「え……日にち間違えて書いたんだ」




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