目隠し鬼

□第2鐘
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「昨日のことは誰にも話さないこと。それが最低条件だね」

切り裂かれた肩に簡単な治療を施しただけで入院を断った駁は、事件の次の日、学校に顔を出したみんなに向かってそう言ったのだという。
玖雅と石蕗がいない今、駁は性格上、昨日の事を全力で調査するつもりだった。

謎が残ったままなのも気に喰わないが、一番駁を急き立てているのは、玖雅へ向かった被害だ。
十何年の親友が大怪我をして、黙って居られる程、駁の心は広くなかった。
また駁にとって玖雅がそれほど大切な存在なのだということ。
そしてその意を告げ、駁は言った。


協力する気があるかーーーーーーーーと。

予想通りの反応だった。
磨緒は親友の石蕗が関わっているとなれば何でもやり遂げる奴だ。
桐琴の双子は迷った末の了解。
数日で割り切ってみせるという心の強い双人。
双子とは知り合ってから2、3年しか経たないが、他の連中には無い強さがある。
もしかしたら俺達6人は前世で知り合いだったんじゃないかと玖雅に言ったら、お前が言うと洒落んなんねーな、と笑われた。






「十彩、左眼は無事なんでしょう?」
事件から6日。
駁が病院で不法侵入者として扱われる前日。
岸夜・磨緒はいつもの通り気品溢れる動作で、ボクにそう問うて来た。

「あぁ、もともと右眼は視力が良くなかったらしいから、傷が完璧に塞がればほぼ元の生活が出来るってさ」

「……そう。それならいいわ」

制服の上に紺色の上着というかマントというかという異常極まりない格好をした美女は、長い黒髪をポニーテールにしていて、この学校で特に目立つ奴だ。
というかいつもつるんでる6人はボク、磐城
(いわき)・駁を含めみんな何かしらで目立つ。


岸夜はその魔女みたいなマントを翻して、廊下の向こうへ去っていった。
鋭い猫のような眼が、よりその印象を強調させている。

「あ、聞くの忘れちゃったなぁ」

もう見えなくなった岸夜を振り返り、呟く。


石蕗に姉妹はいるか?

ボクは何も聞いたことがないが、親友の岸夜なら、何かしらで知っているかもしれない。
何かの手掛かりになると思ったのだが、今から岸夜を追い掛ける気にもならなかった。
どうせクラスは同じなんだし、大して急ぎでもない。
そういって気が付くと、授業時間が近いのか、昼休みの喧騒は鳴りを潜めていた。

「やれやれ、お弁当食べ損ねちゃったなぁ」

そうして、ずっと頭に乗せていた包みを手に取り、教室へ向かった。







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