目隠し鬼

□第2鐘
2ページ/4ページ







「どうにも………夢って感じがして落ち着かないわ」

駁の元を去った磨緒はそのまま歩き続け、校舎の裏にある外れの庭へやって来ていた。

何のためにある場所なのか解らないが、磨緒好みの、シンプルで可愛らしい空間だった。
私以外がいるところなど見たことがないが、一応学校の公共の場である。
今頃は授業が始まる時間だ。
この庭は校舎からは見えない。
だからこうしてサボりをかますときには打ってつけなのだ。

溜め息をつき、中央に配置された木製の白い椅子に腰を下ろす。

「だって目隠し鬼よ……?いくら昔の遊びだとはいえ、何も超常現象なんか起こらなくても……」


ーーーーーーー鬼さんこちら、手のなるほうへ


あの日の楽しそうなみんなの声が蘇る。

黒く染まった太陽が、全ての始まりだった。

後で話を聞いてみればあの日、外で行う部活は試合やらミーティングやらで校庭は使わなかったらしい。

余談だが初めて知ったものとして、校内で私達6人は、遊戯部として有名だったらしい。全くの初耳だった。

そんなこんなで、6日前の事を知っているのは本当に私達6人だけ。
解っていても、この何も知らない生徒達と一緒に過ごしていると、本当は何も無かったんじゃないかと思えて来る。
十彩と玖雅の欠席が其れを否定するが、未だ実感がわかないでいた。

いつも通りの、学校。

その矛盾した空気に堪えられず、こうして逃げて来ているのだが。

「十彩が……生きてる」

それだけで、私は心が満たされてゆく。
この疑念ばかり渦巻く世界の中で唯一、気を許せる親友。
そういっても知り合ったのは割りと最近。
今私達は高校二年生。
中学に上がって間もない頃の話なので、5年といったところか。
玖雅と駁に比べたら全然だ。


6日前の惨事の時には完全に血の気がひいた。
あの出血量で生きていられる可能性は限り無く零だった。
玖雅に止められたまま動けなかったのも事実。
十彩がいないで人生を楽しめる自信もない。
十彩がもしこの世にいなかったら、私は何をしていたんだろう。
他に友達を見つけてた?
そんなわけない。
多分、一生を自分の部屋で過ごしていたんだろう。

「だって、十彩しか、気付いてくれなかった」

私が、此処にいることを。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ