目隠し鬼

□第1鐘
5ページ/5ページ







駁の話によれば、俺はそのまま気を失い、犀が追加で呼んだ救急車で運ばれたらしい。
どうやら俺が思っていたより怪我は酷かったようで、丸3日間は集中治療室にいたのだそうだ。
なんでも、一時的に曲がった骨が内臓に引っ掛かったらしい。
当然腹は切ってあるが、傷が少し残るくらいで、広くも深くも切っていないとの事だった。
だから、早く退院出来るだろう。


ーーーーーーーーーという予定だった。

「お前って馬鹿だったんだねぇ」
「だって病院退屈じゃん♪」
「ボクはその病院に約半年いたことがあるんだケドなぁ」
「……」

そして異常から1週間が経った今。
当然石蕗は面会禁止で、看護師も詳しい事は教えてくれなかった。
救急車が来た時は太陽も元通りで、駁は俺と、磨緒は石蕗と一緒に病院へ。
穂は精神的に過度な光景を見せられ混乱。
犀が何とか持ちこたえ、穂を連れて家に帰ったという。

白い天井を見つめ、病院独特の消毒くさい匂いを嗅ぎながら、今なお呆けている頭を無理矢理働かせている。
おもむろに、駁に聞いてみた。

「どうしてあんな事になったんだと思う?」


「……そのことなんだが、」
「あ?」

「あの場に、石蕗がいたんだ」
「……?」

駁の言葉は不可解だったが、嘘じゃないことは解った。

「どうゆうことだよ?」
「んー…」

俺は知っているから。
人に透えないものが、駁には透えるから。


「多分5歳かそこら辺の石蕗がね、いたんだ」
「小さな石蕗………ねぇ」

「そう、声だってその子のもの」

ふーん、と。
何を考えるでもなく頷いてみたりして。
今までこんなことが無かったワケじゃない。
誰かが傷を負ったのは初めてだったけれど、面白くてそういう存在を追いかけ回してみたり、一緒に遊んだりしたものだ。
もっとも、俺には透えないけれど。

「その子がやったってことか?」
「可能性は高いって話。……それにしても、何だろうね、アレは。子どもの容姿には酷く不釣り合いな表情だったね」

駁は顔を歪ませる。
面白くなさそうだ。

「見た目は石蕗、なんだよな?」
「あぁ。なんというか、もっとあの子が大きかったら、一卵性双生児みたいな」
「石蕗が2人って結構問題だぞ」
「先生方ボロボロだろうね」

あの気の強い石蕗のことだ。
大人ですら口喧嘩では勝てない。

それにしても、石蕗の小さなころねぇ……

「それは、……小さかった頃の石蕗ってことだよなぁ?」
「記憶から抜け堕ちた残滓の可能性かい?有得る話ではあるけれど、今はまだ何とも言えないよ」


最早、理由を探る方向の思考に口を挟む者はいなかった。







前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ