NOVEL
□嘘つきバレンタイン
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「つーなみっ」
呼ばれてふり返ってみたら、そこには塔子が立っていた。
妙にすましている。
「おう。なんだ?塔子」
「今日は何の日でしょう?」
2月14日。今日はバレンタインである。
この質問は、誰がされても絶対に答えられる。
もちろん綱海だってわかっているし、塔子だって答えられないわけがないと知っている。
だから、あえて、答えない。
「・・・さぁな。誰かの誕生日だったか?」
「・・・綱海、性格悪いな」
そんな奴にはコレ、やんないよ と言って、塔子はピンクの包み紙を取り出した。
おっと、そうきたか。これは予想外。
もうちょっとすねてくれると思ったのに、塔子は案外大人な反応をした。
「冗談だって」
「冗談じゃないと困るよ」
「・・・それで、オマエ、それ俺にくれんの?」
「あげない」
「はぁ?」
「嘘、あげる」
塔子は恥ずかしそうにうつむいて、ピンクの包み紙を俺に差し出した。
塔子はいつも、そう。
普段はアレだけ男勝りなくせして、こういうときだけは本当に女の顔になる。
・・・くっそ、可愛いな。
「今年のはさ、手作りなんだ。秋たちがいっぱい教えてくれて、頑張ったんだよ」
「・・・ありがとな」
塔子の女の顔を見られるのは自分だけだと思うと、ちょっと嬉しかった。