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□夕立
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‐ほぇぇー‐
傘を貸した後、自分も帰路につこうと下駄箱までやって来たさくらは困り果てていた。

「傘がないよぅ」
さくらのその小さなつぶやきは、これからどうやって帰ろうかと下駄箱付近に集まっている生徒達のがやがやという喧騒に、吸い込まれて消えていく。

−誰かが間違えて持ってったのかなぁ?−

先ほど傘を貸した友人はもう学校を出てしまったようで、もう姿を見つけることはできない。
そんなさくらを嘲笑うかのように雨足は強くなるばかりで…


さあどうしようかと本気で考えを巡らし始めたとき、後ろから良く知った声が聞こえてきた。

「…そう、だからね、スコールって言うのはね…」

「そうなのか…初耳だな」

どうやら中学生になって少しは山崎君の扱いに慣れたみたい、などと、どうでもいいことを考えていると、山崎君はちらりとこちらを見た後、

「じゃあ 僕はこれで」

と言って小狼から離れて行った。

小狼も

「じゃあな」

と左手を軽くあげて挨拶したあと、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。

「やっぱりさくらだ」

いきなり自分の名前が彼の口から発せられて、少し心拍数が上昇したようだ。
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