ANSWER

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あれから、何事もなく(別に何も無かった訳じゃないけれど)時は過ぎていった。
私は部活で副部長だなんて大変な立場になってしまったし、
もうすぐ自然教室だとかで実行委員長にまでされて……いや、なってしまった。
自然教室だって。あー、面倒くさい。
1人でお風呂に入れるんだったらまだ我慢くらい出来たけれど。
2クラス全員でお風呂って一体何考えてるんだか。
もう中学生ですよ。



「あ、黒崎先生。次の授業は教室ですか」



なんてことはない。
前の授業のときに聞き忘れてしまったし、今たまたま会ったから聞いただけ。
きっと黒崎先生もそれをわかっている。



「いや、理科室」

「そうですか」



そういえば、最近黒崎先生は私にため口を聞くことが多くなった気がする。
別に先生のほうが年上なんだし立場も上なんだから不快には思わない。
いや寧ろ、打ち解けてくれたっていうのは気分がいいものなのだけれど。
私はロッカーから大量の配布プリントを抱えて歩き出した。



「……あ、それと」

「はい?」

「あ、ちょ、」



振向いた拍子に、ばさばさばさと音をたててプリントが舞った。
あ、やってしまった。



「あーあ」

「あーあじゃ無いでしょ。さっさと拾いますよ」

「はーい」



最近気づいたのだけれど、私はちょっとした指フェチかもしれない。
ただきれいなだけじゃなくて、何というかしっかりしていて長いっていうの?
そういう手の人は美しい、そう思う。
唐突にそんなことを思ったのは、脈絡がないわけではなくて、黒崎先生の手がそれだったからだ。
じっと手を見ていると、黒崎先生の動きが止まった。



「私に全部やらせるつもりですか」

「あ、すいません」



拾い上げたプリントに「自然教室のしおり」と書いてあったことに少し私は腹が立った。
こんな所でまでいらいらさせるのか、自然教室とやらは!













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