その他×ツナ 1

□snow
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 ――― 雪って、ツナみてぇだよな。


 ――― あぁ?


 あれはいつのことだったか。
 場所はたしか・・・校庭だった。冬休みで誰もいない、ガランとした校庭。

 たったひと晩で降り積もった新雪の中、雪にまみれてはしゃぐ10代目のお姿があった。おそらく他にも誰かいたんだろうが、他の奴なんざどうでもよすぎて記憶から消した。
 太陽の光に透けてキラキラ輝く栗色の髪が眩しすぎて、目を細めたことをよく覚えている。
 声を上げて笑う無垢な笑顔、はしゃいで紅潮した頬が堪らなく愛らしくて。飽きることなくバカみたいに見惚れていた。

 「アホか。10代目をこんな寒々しいモンに例えんじゃねぇよ」

 ザクッと足元の雪を蹴りつけ、くだらねぇと吐き捨てた。雪を踏み固めた靴底が冷たい。あんなにあたたかな、柔らかな笑顔のどこが氷の結晶だ?
 隣に立つ能天気ヤローはハハッと噴き出して、呆れたように肩を竦めた。

 「寒々しいって・・・。そりゃあ、ツナはンなに冷たかねぇけどさ。なんか、ツナっぽくね?純白っつーか、キラキラしてるトコが」

 「・・・・・・」

 「雪なんかすぐ溶けちまうし、ひらひらしてて頼りなく見えるだろ?けど、いつの間にかそこにあるものを全部真っ白に覆って、いままでと全然違う景色に変えちまう力があるんだぜ」

 それってすごくね?と、山本が独り言のように言う。
 10代目に出会って俺の世界が変わったように、コイツもまた、10代目によって見る景色を変えられたとでも言いたいのか。

 「・・・・・・」

 遠くを見つめる目。ぼんやりと腐抜けた顔してるクセに、ひたすら10代目を追う眼差しだけが凶暴なほど熱くて、飢えた獣のように鋭くて。
 10代目を見つめるとき、10代目が決して見ていないときだけ、コイツがこんな顔をするのを、俺は知っている。
 飢えた獣が血を吐くほど渇望するのは、純粋で穢れのないあの御方、ただ一人――・・・


 「手つかずの真っ白な雪見っとさー。・・・無性に自分の足跡、つけたくなんねえ?」


 「!」


 反射的に山本の胸ぐらを掴み上げていた。激昂のまま力任せにその頬を殴りつけたと知ったのは、手の甲に鈍痛を感じてからだった。

 すぐに驚いた10代目が慌てて走って来て、でも途中で雪に足を取られて転んでしまったから、それどころではなくなって―――・・・。




 ロクな思い出じゃない。もう10年以上も昔の、ガキの頃のハナシだ。
 忘れかけていた記憶が掘り起こされたのは、久しぶりに雪なんか見たせいかもしれない。

 降りつもる、白い雪。

 無垢な純白さから連想されるのは、幼い日のあの方のお姿だけで充分だったのに。今も昔も、記憶の中にまで俺と10代目の間に入り込んで邪魔しやがるアイツが、本当に腹立たしい。

 くだらない、面白くもない記憶だと、頭から追い払う。
 会った瞬間からいけ好かなかった奴が、ハッキリと大嫌いになった。ただそれだけの出来事だったと自分に言い聞かせて。






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