その他×ツナ 2

□世界の終わりを知る者4
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バタン、と車のドアを閉めると、運転手が静かに車を発進させた。

こいつの運転技術は悪くない。
しかも、生粋のイタリア人で、まだ日本語を覚えていないことも何かと都合がいい。
10代目を車にお乗せするときは、俺は必ずこいつを指名していた。



10代目は、言葉なく、窓の外を眺めていた。俺は視線を前に向けたまま、気になっていたことを控えめに口にする。

「アイツには・・・言わなかったんですか?」

「・・・・うん」

10代目はこくりと頷いて、そのままそっと目を伏せた。

「言わないよ。だって言っちゃったら、きっと山本もついて来るだろ?」

「・・・・・・」

予想通りの答えに、眉を寄せた。
それに気付いた10代目が、苦い顔をする。

「その話なら、昨日散々したと思うけど?」

「・・・・・・ハイ」

確かにしました。散々。・・・・―――結局平行線でしたけど。

そう思って、俺がぐぅ、と、唸るように唇を噛むと、隣からは、ふぅ、と軽い溜息が聞こえた。

「なら、今からでも山本に全部話して、交代する?」

「それはっ!!」

弾かれたように、10代目を見る。
厳しい口調とは裏腹に、静かに澄んだ琥珀色の瞳が、俺を映していた。

「・・・・・・・嫌です・・・」

そんな顔をした貴方に、声を荒げることなどできるわけがないから、行き場のない苛立ちに歯を食いしばる。

「だよね」

困ったように眉を下げる貴方は、本当にズルい。


綺麗すぎて、優しすぎて、狡い人だ。



「言ったろ?白蘭がオレを呼び出したのは、アジトを奇襲するための作戦かもしれないって」

「それは俺も同感です。奴等が何を企んでやがるのかまったく予想がつきませんが、奴らの情報力は侮れない。既に並盛の地下アジトの位置も割り出している可能性も、否定できません」

「うん。だから、できるだけアジトの守りを固めておきたいんだって話をしたよね?」

「ですが、それで10代目のお傍に守護者が誰もつかないことの方がよっぽど問題だと、俺も申し上げました」

不敬は重々承知だが、ここは何が何でも譲るわけにはいかない。知らず荒げた声に気付いて、バツの悪い顔で視線を落とす。そして、低く声を落として、腹から沸く怒りを押しとどめ、その忌むべき相手の名を口にする。


「これから10代目がお会いになる相手は、―――あの白蘭なんですよ?」


「・・・・・・うん」


きゅっと眉を寄せ、10代目がかすかに頷く。





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