その他×ツナ 2
□透明な君へ
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気がついたら、知らない場所だった。
「・・・ん・・・?あれ・・・ここ・・・」
硬くて冷たい床からむくりと起き上がった青年は、きょろきょろとあたりを見回した。
そこは白い壁に囲まれた、ただっ広い空間。
天井がドームのような形で、四方を壁に囲まれたその空間の広さは、ゆうに学校の体育館くらいはあるかもしれない。
倉庫にしては、明るすぎる。何かのホールにしては、殺風景すぎる。
ただの“空間”と呼ぶに相応しい場所のほぼ中央に、自分だけがぽつんといる。
「? ・・・なんだろ、これ」
見ると、自分の足元に、オレンジ色で、何かの紋章が入った手のひらサイズの綺麗な箱が落ちている。そのすぐ横には、銀色のボディに、箱と同じ紋章が装飾された小ぶりのピストル。何気なくそれを手に取ると―――
「――重っ!!何コレっ!?」
綺麗な見た目に反してしっかりとした重量を感じて驚いた。冷たい感触に、素人目でもモデルガンではないことを悟る。
うっかり暴発でもしたら大変だ。手に取ったそれを恐る恐る元の位置にそぉっと戻してみる。
一方の小さな箱もビクビクしながら手に取ったがそちらは軽く、中身は空っぽだった。ただ、アルミやスチールとも違い、セラミックとも少し違う素材は、ただの箱と呼ぶのは相応しくない頑丈さだ。
しかし、その箱にも見覚えがない。
「う―――ん・・・」
わからないことだらけの空間で、ぽりぽりと頭を掻いて思いだしてみた。
(・・・っていうか・・・オレ、何してたんだっけ?)
というより、自分は一体なぜこんなところにいるのだろうか。
そもそも自分はどこから来たのか。
考えれば考えるほど頭が真っ白で、先ほどまでの出来事が何も思いだせない。一生懸命頭をひねるのだが、何を思いだそうとしているのかさえ分からなくなってきた。
「あ―――、もういーや!分かんないっ!」
深くものごとを考えるのは面倒くさい。
そのうち思いだすだろうと楽観的に結論づけて、まずは誰かを見つけて家までの帰り道を聞こう、と前向きに考えることにした。
そこに置いてあったものはそのままにして、スタスタとドアらしきものへ向かう。が・・・・・・
「あれ――・・・?」
ドアの前に立っても、扉が開かない。
自動ドアのように見えるのだが、ドアの横についている小さな機械で何か操作しなければ開かないようだ。
他にも似たようなドアがいくつかあったので行ってみたが、どうやらすべて同じ仕組みらしい。
「ひょっとして・・・出られない・・・?」
サァっと血の気が引いてきた。
そんな馬鹿なと焦って出口を探してみたものの結局無駄足で、ただ動き回って疲れただけだった。
こうなったら外から誰かが開けてくれるのを待つしかなさそうだ。あきらめて、ペタンと壁に凭れて座り込む。
膝を抱えて、早く誰か来てくれないかなぁ・・・なんて最初はそわそわしていたのだが。
なぜか身体がひどく疲れていて、だんだんと瞼が重くなり――――
「――――・・・」
座り込んだ姿勢のまま、すうっと意識が途切れた。
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