山本×ツナ2

□バレンタイン!≪後編≫
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パラパラと、コンクリートの壁が崩れ落ちる音がする。
咄嗟にツナを庇って廊下に伏せた俺は、轟音が止んだのを確認してからそっと顔を上げた。

「・・・・ツナ、大丈夫か?」

「う、うん。ありがと山本・・・・」

身を起こして、ギョっとした。

(――――ぅわっ・・・・・!!!)

近い。ツナの顔が、ものすごく近い。ついでに身体もかなり密着している。

(足がっ・・・・っ!ふ、太ももがっ・・・・・・!!!)

伏せた時、思わずツナを抱き締めて押し倒してしまった俺である。
手をついた両腕の中のツナを見ると、無意識だったのか引き寄せるように俺の服を掴んでいて。俺の膝に挟まれた脚はスカートが捲くれ、きわどいところまで露わになっている。栗色の髪は軽く乱れて白い頬にかかり、―――要は、俺の腕の中でかなり色っぽく寝転がっている状態だ。

カァァァァァっと、頭に血が昇った。

「わっ、悪いっ・・・・・ごめんなっ!!」

ひどくイケナイ事をしている気がしてバッと飛び退いた。
ツナはぽかんとしている。

「え?なんで?山本が庇ってくれたおかげで助かったよ」

よっこいしょっと身を起こしたツナは、ペタンと廊下に座って首をかしげる。
それもそうだ。男同士で密着してなんで焦ってんだよ、俺。

「でも急になに・・・・――ヒぃぃぃぃぃっっっ!!!!!」

ザァっと青褪めて、ズササササァ―――っと後ろへ下がったツナは、俺の後ろの方を見て急にガタガタ震えだした。

「ツ、ツナ?どうし・・・――」

「下校時刻を過ぎての校舎内立ち入りは禁止だよ」

俺の声に被せて背中から投げつけられた声に納得した。ああ、なるほどな、そりゃあ怯えるよな。

ぐいっと仰け反って顔だけ後ろへ向けたら、冷たい美貌の並中風紀委員長が逆さまに写った。
トンファー片手に超絶不機嫌オーラを撒き散らす雲雀からはゆらりと怒気が立ち上り、痛いほどの殺気で俺をビリビリ刺してくる。

「僕の目の前で群れようなんて、いい度胸だね」

「・・・え、えーっと、これからお前んトコ行こうと思ってたんだぜ。なぁツナ、今渡しちまえば?手間が省けて良かったじゃねーか」

「うっ・・・そのっ、あっ・・・のっ・・・・・・」

廊下に座り込んだまま涙目で怯えるツナは真っ青で、ふるふると可憐に震えている。まぁ、こんだけ怒ってる雲雀を前にしたら無理もない。
言葉に詰まるツナの方に、雲雀がちらりと視線を動かした。驚いたように軽く目を開いて、それから―――。

「・・・・・・・・・へぇ」

笑った・・・というか、ふっと微笑んだのだ。ツナを見て。

(・・・・・・・へぇ・・・??)

俺は目をパチパチさせて、コイツ幻じゃねーのかと、自分の目を疑う。まぁ、確かに今のツナを見てその反応ってのは、わからなくもないんだけど・・・。

(――――う・・・やべ)

うっかりツナの方を見て、ズクリと変な熱が込み上げる。雲雀を見上げるツナのポーズがなんかエロい。
手を床について尻もちをついているような格好なんだけど、太ももを擦り合わせ、膝から先を割開いている。それだけでもちょっとクるのに、スラリと伸びた脚と、清純さと色香を両立させる黒のハイソックスを無防備に投げ出して僅かに身を捩ってるのがまた・・・俺のツボに入ってしまった。

ビクビク震えて怖がるツナは可憐すぎて、もっと虐めて泣かせてみたくなる。いや、もういっそどっかに閉じ込めて、隠しちまいたいくらい可愛い。
・・・けどな。まさかあの雲雀まで甘ったるく微笑ませる威力があるとは。やっぱ、ツナってすげぇ。

「赤ん坊に言われて待ってたのに来ないから探しに来たけど・・・・なかなかイイね。そのスカート丈は服装規定違反だけど、君なら特別に許可してもいいな」

ツナを上から下まで観察して目を細めた雲雀の顔は、誰だお前と突っ込みたくなるほど柔らかい。いきなりツナに対してだけ優しくなった物言いにカチンときた。んじゃなにか、雲雀はこのツナを見るために、わざわざ探しに来たってことなのか??

(つか、・・・ツナの脚見てんなよ)

ムカムカしてきた。他の男がじろじろツナを見てんのは、腹が立つ。
込み上げた衝動のまま、考えるより先に体が前に出た。

「―――可愛いのはわかるんだけどよ、ツナ怯えてっからさ。あんま近付かねーでやってくんね?」

ピクリと反応した雲雀がジロリと俺を睨んだ。そうそう、これがいつもの凶悪面だよな。

「なんなのキミ、邪魔なんだけど。・・・ああ、それとも、やっと自覚した?」

「・・・・・・・・・ん?」

首を傾げた俺に、雲雀はつまらなそうに鼻を鳴らした。呆れたような溜息とともに無表情に戻る。

「なんだ、違うの。まぁ、どっちでもいいけど。独占欲剥き出しにするくらいなら、いい加減気付けばいいのに」

「・・・・・?何のことだ??」

独り言か?にしちゃーデカいな、聞こえてるぜ。
けど、チャキ、と当たり前のようにトンファーを構えた雲雀は、これ以上会話する気はなさそうだ。

「まぁ、君を噛み殺すことには変わりないけどね。この子に群らがる男は―――全員始末するよ」

獰猛な肉食獣は、獲物を前に眼を光らせた。




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