山本×ツナ2
□春あらし ※R18※
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信じらんねえってカオしてんな。
ま、そりゃ無理もねえ。
「・・・・・・・・・」
拒絶か、罵倒か、軽蔑か。
ひっぱたかれるかと身構えたのは一瞬で、すぐにこの親友に限ってそれはないなと苦笑した。
こんなときでさえ”大事な親友”を信じ、ただひたすら「こうされるべき正当な理由」を探そうとするツナの甘さと純粋さに、泣きたいほどの愛おしさと、狂おしいほどのせつなさばかりがこみ上げる。
「・・・・・・な、んで・・・?」
ようやく絞り出した声は、可哀想なくらい震えていた。
いたいけな面差しに浮かぶのはただ、驚愕と困惑だけ。
どうして、なんで、と。
混乱する唇はそれ以上問いを発せないまま、引き攣れたように小刻みに震えるだけだ。
「・・・なんでかな。わかんねえよな」
きっとツナには検討もつかないだろう。誰もいなくなった薄暗い教室で、どうして突然親友に押し倒されたのか。
どうしていきなり覆いかぶされて無理矢理キスを仕掛けられたのか。
どうして、馬乗りになったままの俺が退こうとしないのか。
もしも俺がこのどうしようもない衝動をやり過ごせていたならば。ツナは俺にこんなことされるなんて、一生思いつきもしなかったに違いない。
残酷なくらいキレイでまっすぐな、ツナだから。
歪みきって行き場を失った俺のドス黒い欲望なんてわかるはずがないんだと、諦観にも似た感傷に笑い出したくなる。
「・・・・ッ、・・・・・な、に・・・?」
親指で桜色の唇に触れたら、ツナがピクンと肩を震わせた。たったいま触れたばかりの唇はまだ濡れていて、なまめかしい。
強張った小柄な身体は本気の怯えを伝えてくるのに、恐怖を意志の力で押し殺して、縋るような目で俺を見上げるツナが痛々しい。
どこまで俺を信じてくれるだろう、この親友は。
「ッ!?」
くしゃりと歪みそうになった醜悪な顔をツナに見られたくなくて、顔を寄せた。
けれど味わう口腔の甘さと熱に、すぐになにもかもどうでもよくなってしまう。鼻腔をかすめたツナの汗の匂いにもう何も考えられなくなって、逃げまどうツナの舌を夢中で追いかけた。
「・・・・・・ふ、・・・ぅんん、ん」
どれだけこの感触を夢想しただろう。
焦がれて。焦がれて。狂うほど求めて。
頭から手に入らないと解っているから余計焦がれるのかと思っていた。ひょっとして手に入れたら意外となんでもなくて、夢が叶った途端にこの熱病が醒めるんじゃないかとも。
だけど、そんなわけなかった。
「――――っ、んゥ・・・っん・・・」
だってツナのこんな甘い吐息、俺は知らなかった。鼻にかかった苦しげな声がこんなに色っぽくて、こんなに自分の情欲を掻き毟られるものだなんて知らなかった。
俺の想像なんか大したことない。現実のツナはもっと生々しくて、もっと淫らで、愛おしくて、俺の全てを鷲掴みにする。
「・・・ゃ、・・・・・・・ッ、」
苦しげに漏らす吐息さえ呑みこむ勢いで唾液を啜ってもまだ足りなくて、滾る欲求のまま邪魔な服を取り払った。千切れたボタンが弾け飛んで、木目の床に転がっていく。
「・・・・・・ゃ・・・だ、山本、ヤ・・・ッ!」
暴いた白い素肌に、目眩がする。
我に返ったのか、慌てて力を込めて抵抗をはじめたツナにゾクゾクする。
絶対に逃がさないと強く思えば思うほど獣じみた欲望は昂って、滾り切った全身の血がなお沸騰して咆哮したくなった。
これは、俺のものだと――――
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