山本×ツナ2
□拍手短文 山ツナ4
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市営グラウンドの施設内の一角。
男子更衣室から少し離れた隅っこの空きスペースに、俺達は潜んでいた。
秋の大きな大会を終えたばかりの野球部員達は、今ごろ帰り支度を急いでいるハズだ。きっと俺達がこんなところにいるなんて考えもしないだろう。
「―――していい?」
「・・・・・・う・・」
まだユニフォーム姿のままの山本が片手をコンクリート壁につき、俺を囲い込むようにして立ちはだかっている。
「約束、だもんな?」
「・・・・・・ううう・・」
「いいよな?」
お伺いを立てる殊勝な声音。
だけど、絶対断られると思ってないだろお前、とでも突っ込みたくなるほどの余裕を見せて、山本が俺に迫って来る。
「ツ〜〜〜ナ?」
「ううううう〜〜〜〜」
頼むから、これ以上その無駄に整った顔を近付けないでくれと叫びたい。が、そんな俺の心の声が山本に届くはずもなく。
山本が甘い仕草で、俺の額にコツンと額をぶつけてきた。
「勝ったぜ?」
「・・・し、知ってるよ」
「しかもノーヒットノーランで抑えたし」
「・・・分かってるし」
「満塁ホームランも打ちまくった」
「・・・全部見てたって」
「ぜーんぶ、ツナのためだかんな」
「・・・・・・・・・・・・」
いやいやいやいや。
俺のために頑張って最優秀選手にまで選ばれちゃうとか、ホントありえないから。
そりゃあまあ、そう言われたら悪い気はしないけど、いくらなんでも俺のためってのは言葉のアヤにしても言い過ぎ―――
「すっげぇがんばってツナにイイとこ見せたら、ご褒美くれるって約束だもんな」
・・・やばい。アヤじゃないっぽい。
本気だ。120%くらい本気でご褒美目当てに全力投球しちゃったんだ山本!!!
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