山本×ツナ1
□イタズラなキスマーク
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「あれ?ツナ、ここどうしたんだ?」
「へ??」
「どっかぶつけたのか?」
びろーん、と俺のジャージの襟を後ろに引っぱった山本にそう聞かれたけど、最初は何のことだかわからなかった。
ちなみに今は、体育の授業中。俺と山本は並んで座って、獄寺君のチームがサッカーの試合をしているところを見学中だ。
「―――ってか、ツナこれ・・・・・・」
何だろう?と頭を捻っている俺は、俺の肌を凝視する山本が絶句して固まっていることには気付かない。
少し考えてから、あ!と思い出し、ポンと手を打った。
「わかった!昨日のディーノさんの悪戯だ!」
まさか痕に残るなんて思わなかった!
手でそのあたりを擦ってみるが、凹凸があるわけじゃないので、自分ではどうなっているのかわからない。
「・・・・ディーノさんが?」
「うーん。よくわかんないんだけど、こうすると、虫除けになるって言ってたよ」
「・・・・・・・・」
「まぁ、今の時期虫は出ないですよって教えてあげたけどね」
俺の言葉を聞いて、山本が引きつった笑顔でフリーズする。ポツリと漏らした「・・・・へぇ」という呟きが、まるで別人のように低かったのは空耳だろうか。
ピキンと固まった山本の様子に続きを促されてる気がして「ええと・・」と思い出しながら口を開いた。
「昨日風呂上りにいきなりディーノさんに後ろから抱きつかれてさ、ココ急に吸いつかれたんだ。
結構痛くって、何するんですかっ!て怒鳴ったら、『そろそろツナも虫除けが必要だからな』って、わけわかんないこと言ってはぐらかされてさぁ」
言いながら首の後ろ・・・うなじの辺りに手をおいてさする俺は、昨日の痛みを思い出して苦い顔をする。
「ディーノさんのいつもの悪戯だと思うんだけど、それにしては真剣っていうか、ちょっと鬼気迫ってて。
変だなーと思って、一応聞き返したんだよ?そしたらリボーンがいきなり出てきてディーノさんを蹴り飛ばしちゃうから、俺まで巻き込まれちゃって」
そっちの方がよっぽど痛かったから、こんなのすっかり忘れてたよ、と笑った俺に、山本はものすごく複雑な表情で「・・・・そっか」と相槌をうった。
ちなみにリボーンがディーノさんを蹴ったのは、なんか蹴りたくなったから、だそうだ。理不尽すぎる。
「でも面白いよねー、これで虫が寄って来ないって。なんか意味があるのかなぁ?」
もちろん俺だって、これで虫除けになるとは思っていない。だから、イタリアに伝わるおまじないみたいなものかな、と勝手に納得したのだ。
ディーノさんのことだから、マフィア絡みで何か深い意味がありそうだけど、だったら嫌だなぁ・・・今度獄寺君に聞いてみるか。いやでも、マフィアに興味あると思われても、それはそれで面倒だ。やっぱリボーンに聞こう。
「ツナ」
「え?」
山本に呼ばれたと思ったら、急にぐいっと肩を引き寄せられ、体育座りをしていた俺はバランスを崩す。なんとかこらえようと片足が持ち上がって、余計変な格好になった。
「わっ・・・・・」
「おっと」
不格好に倒れこんできた俺を、ぽふ、と逞しい胸板で受け止めた山本は、「なぁ、ツナ」と密やかに囁いた。
見上げれば、内緒話でもするかのような距離に精悍な顔があってドキッとする。
いつ見ても整った顔だ。吐息がかかるほどの近さで見てもなにとつ欠点が見つからない、憎らしいほどの男前。
「コレさ」
ディーノさんのつけた痕をトン、と指先で突いて、揶揄するように目を細めた。男らしい涼やかな笑みに、思わず目を奪われる。
「?」
「ディーノさんは虫除けのつもりだろうけど、――逆効果だぜ?」
「え・・・?」
言いざま、山本の顔が動いて、視界から消えた。
がばりと筋肉質な身体が覆いかぶさってきて、二の腕ごと俺の身体を拘束する。
「・・・・・・っ!」
逃げる暇なんて、なかった。
首筋に、熱い吐息がかかる。
昨日ディーノさんにされたように、同じ場所を、同じようにキュっと軽く吸われて。
ねろりとした舌の感触にビクンと震えた瞬間、薄い皮膚に硬い歯を立てられた。
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