山本×ツナ1

□キューっとして、ぎゅー
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もうとっくに下校時間は過ぎていて、ほとんど校舎に生徒は残っていない。
窓から刺す夕暮れに紅く染まる廊下を抜けて、黒川花はガラリと2-Aの教室のドアを開けた。

教室の中には、大柄で遠目にも整った容貌がわかる男子生徒が1人、窓際の机に座っていた。

「――お。黒川。どーしたんだ?」

「山本?・・・あんたこそ何やってんの?部活は?」

「終わったぜ」

「んで、わざわざ沢田待つために教室まで戻ってきたっての?」

はぁ、と呆れて言うと、山本は少し驚いた顔をして、「よくわかったなー」と笑った。

「いや。フツーわかるから」

(―――てか。そこ沢田の席だし。カバン置きっぱなしだし)

おおかた補習で遅くなった沢田を外から見かけて迎えに来たに違いない。
外で待っていればいいものを、わざわざ教室まで迎えに来るなんて、付き合いたてのラブラブバカップルみたいでイラッとする。

「ほんっとあんたたち、仲良すぎてキモいわ」

カタン、と自分の席の椅子を引き、机の中からペンケースを取りだす。
これを忘れなければ、いちいちこんな大猿と会話しなくて済んだのに、と思うと舌打ちでもしたくなる。

「ハハ、なんだよそれ、フツーじゃね?」

「いや、全然フツーじゃないから。・・ったくベタベタしちゃって。これだから男子って―――」

「?」

「思い出した!ちょっと山本、あんた、今好きな人いないでしょ?」

唐突な質問に、山本はきょとん、と目を丸くした。

「ああ、いねーけど?」

「じゃ、好きな子のタイプは?」

「タイプ?・・・んー。あんま考えたことねぇからわかんねーや」

困り顔で、顎を掻きながらヘラッと笑ったモテ男に、「だろーね」と黒川は溜息をつく。
完全に予想通りの答えだが、その答えに納得するわけにはいかないのだ。

「じゃ、今考えて。なんかあるでしょ?芸能人とかモデルとかで言ったら、どういう顔が好み?」

ずいっと詰め寄ってきた黒川に、妙に気圧されて山本は思わず身を引く。

「ちょっ・・・黒川、なんか怒ってねえ?」

「怒ってないけど、京子の為に具体的な答えが必要なの」

「笹川?」

なんで笹川京子の名前が出るのだとますます目を丸くする山本に、黒川は面倒だと思いながらも、協力を求めるため説明することにした。



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