その他×ツナ 1
□キミの常識 ボクラの非常識
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「・・・で。口説いたのか」
「そりゃ口説いたさ!口説きまくったとも!!」
ザワザワと雑談の声が響くパーティー会場。
俺が興奮気味に沢田綱吉との電話のやりとりを話すと、10年前の元クラスメートはなるほどなぁと頷いた。
「だから山本来てんのかぁ。超納得」
「つーかアイツ、シーズン真っ最中じゃねーの?いいのかよ、こんなトコいて」
くいっとグラスビールを煽った友人が、中央ビュッフェの向こうに目を向ける。視線の先には、ワッと盛り上がる男女の群れ。その中心には、頭ひとつぶん抜き出た精悍な男前。
もとから文句ナシに格好良かった山本だが、10年という歳月を経た今、爽やかさとワイルドさが混在するイイ男の見本みたいになりやがった。
そんな恵まれた容姿にプラスして、史上最年少で過去最高年俸額を叩きだした実力派の現役プロ野球選手。完璧なステータスは、この同窓会会場で・・いや、並盛きっての出世頭と言えるだろう。元担任や年老いた元学年主任なんか鼻高々だ。
「俺だって山本忙しいのに悪いな〜、無理かな〜、とは思ったけどさぁ。沢田が来るっつったら一発OK。即答だったんだぜ、山本の奴」
「・・・・・・」
「てかアイツ、電話で同窓会誘った時点ではフツーに行くっつったんだぜ?なのにさ、沢田が欠席になってるって言った途端『ツナいないんなら行かね』ってバッサリだぜ!?ひどくね!?ありえなくね!?」
今も昔もモテまくり、どんな女だってよりどりみどりなはずの山本が、なぜか唯一、異常なまでに執着を見せる人間・・・それが沢田綱吉。通称"ダメツナ"である。
都市伝説か七不思議かと囁かれていたその事実は、悲しいかな10年たった今でもどうやら健在らしい。
「しっかし沢田も災難だよなぁ〜。お前、山本来て欲しさに無理矢理口説き落としたんだろ?」
「おい、人聞きの悪いこと言うなよ。俺はAクラスの幹事としてだなぁ、」
「いーや、ひどいって。なんたってあのダメツナだぜぇ?今さらどのツラ下げて同窓会なんか出て来んだよ」
「だっよなぁ〜!俺、今だにダメツナよりダメな奴見たことねぇもん」
友人達は当時の沢田のダメっぷりをアレコレ思い出しては、ひゃひゃひゃと大爆笑しはじめる。
可哀想だが、否定してやる材料がない。散々拝み倒しといて今さらだけど、微妙に罪悪感が湧いてきたような・・・・・・スマン、沢田。
「・・・いや、でもな、沢田の奴もはじめはガード固くってさぁ、俺だって結構苦労して・・・」
「へぇ。そーなのか?」
一同、そこで突然割り込んできた声にビクッ!!と硬直する。サァっと一気に血の気が引いた。
「やっ、やややや山本っっ!?」
なんでここに!?叫ぶと同時に友人達はズササササァァ―――っ!!と一気に壁まで後ずさった。おい待て、俺を置いていくなぁぁっ!!!
「なぁ、サワタニ」
「!」
山本はポンと俺の肩に手を置くと、整いすぎた顔でにっこり笑う。そしてうすら寒いほど抑揚のない声で淡々と俺を問い詰めた。
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