山本×ツナ1
□イタズラなキスマーク
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――――がぶっ!!!
「い゛・・・・・っっっっだ―――っ!!!」
叫んで、あまりの痛みに力いっぱい暴れる。が、山本はがっちり俺の身体を固定していてびくともしない。
吸血鬼だってもっとスマートに噛むだろう。ギリっと皮膚に食い込む歯が痛い。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!」
じんじんする!!ひりひりするっ!!いま絶っ対歯型ついたぞ!!!
暴れる俺と、それをぎゅうっと抱き締める山本に、周りから「なにやってんのお前ら」という呆れ声と、「おーい山本、授業中くらい我慢しろよなー」という冗談と、「センセー、山本が沢田襲ってま〜す」「いや、むしろここは獄寺呼ぼうぜ」という、ヒマ人達の笑い声などなどが聞こえてきたが、痛すぎて涙目になった俺はそっちに抗議してる場合じゃない。
「痛いよっっっ!!な゙にすんだ山本っっっ!!!」
思わず声を荒げて叫んだ。まったく、ヒトの首をかじるなんていったい何の冗談だ!?
ギッと睨みつけてやるが、「ハハハ、痛かったか〜、わりぃわりぃ」と、楽しそうに笑う山本は俺の怒りなんかどこ吹く風。
完全にスルーされてさらにムッとした。
山本の腕から解放されると、俺はサッと山本から距離をおいて座りなおす。
警戒してむぅっと睨む俺をじっと見つめ、再びにこっと笑った山本は、ポンっと俺の頭に手を置いて、そのままポンポンとあやすように軽く頭を撫ではじめた。
いや、だからね山本。俺、怒ってるんだってば。
「・・・俺さ、負けんの嫌いなんだよなー。まぁ、負ける気もしねーけど、みすみす先越されちまうのは悔しいし。
んでさ、やっぱ煽られたからには乗っかるのが礼儀だと思うんだよな」
「はっ??山本、何言って・・・」
「なぁ、今日もディーノさん、ツナん家来るんだろ?」
「え?あ――、うん、た、多分」
しまった。怒ってるのに、ついまともに答えてしまった。
山本の話にはまったく脈絡がなくて、見事なマイペースっぷりに俺の方が引きずられる。
なんかもう、こだわるだけ無駄な気がしてきたな。
「そんじゃ、二度とツナに触る気が起きねぇように、しっかり見せとかねぇとな」
「えぇ!?見せるの?」
まさか、この歯型を??
いや、そりゃあまだ自分では見てないけど、見なくたってわかる。絶対にディーノさんのつけた痕の上に、くっきりはっきり山本の歯型が残ってるだろう。
意味が解らず聞き返した俺に、山本は晴れ晴れと爽やかな笑みを浮かべた。
「安心していーぜ、ツナ。もうディーノさんにイタズラされることはねぇだろうからさ」
「そ、そうなの・・・?」
「ああ。なんたって新しい虫除け、超強力だからなー」
「また虫除け???」
ニッと勝気な笑みを唇に刻んで、さらに俺を混乱させた山本は、ピピーっという笛の音を聞いてグラウンドに目を向ける。
「お。終わったみてーだぜ。次、俺らの番か」
何事もなかったかのように山本がすっと立ち上がり、周りのクラスメイトも、教師の集合の合図に立ちあがってだらだらと移動を始めた。
キツネにつままれたように首を傾げる俺に、山本がいつもの調子で、「ほら、ツナも」と手を伸ばしてくれたから、惚けていた俺も思わず「あ、うん」と、その手を取って立ち上がる。
グラウンドの方では獄寺君が、嬉々として俺を呼んでぶんぶん両手を振っている。あああもう、皆がいる前で大声で10代目とか言わないでよ、恥ずかしいからっ!!
あわてて駆けだそうとした俺の手首を、ぱっと山本が取ったので自然と足が止まった。
「やまもと?」
「――今まで、言う必要もなかったから黙ってたけど、そろそろ言っとくな」
「うん?」
スッと俺の隣に並んだ山本は少し屈んで、こっそり俺に耳打ちしてきた。低く抑えた真剣な声音に内心ドキっとする。
「俺、ツナのこと絶対誰にも渡す気ねぇから。覚悟しといたほうがいいぜ?」
「・・・・・・・へ????」
わけがわからなくて首をかしげると、まだ少しヒリヒリする俺の首筋に、優しく指を当てられた。
愛おしげにそっと撫でられ、反射的にピクっと身を引いたけど、俺を見つめてくる熱の籠った眼差しに捕らえられて、不覚にもドクンと心臓が鳴って動けなくなる。
「今はまだ味見だけで止めとくけど。続きはまた、そのうちな」
「つづきっ・・・て・・・・?」
味見ってなに??そのうちって???
そう聞いたら、ニヤッと含み笑いをされて。
素早く首を伸ばした山本は、俺のうなじを今度は柔らかく甘噛みした。
<END>
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コミック37巻に、ディーノさんがめっちゃ出てたので。
久しぶりに会ったツナが可愛くて、危機感に駆られ思わず手を出してしまったイタリア男(笑)と、それを瞬時に理解して、ついプチっときちゃった山本でした。
・・・それにしても、キスマークを知らないツナはまだいいとして、
一番凄いのは、山本がツナに抱きつこうが舐めようが噛み付こうが冗談としてスルーする、2-Aの面々でしょう(笑)
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