その他×ツナ 1
□そんな貴方が愛しくて
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本当は、獄寺にだって解っている。
純粋で、誠実で、なによりモラルを重んじる綱吉が、性別の壁を越えて自分を好きだと言ってくれたのだ。
恋人がありながら、他の人間に目移りするなんて、真面目な綱吉に限って絶対にありえないと断言できる。
何より、綱吉自身が「違う」と言ったのだから、それだけで疑う余地なんてどこにもない。
けれど、それでも。
もうずっと長いこと、神聖で崇高な存在として、ただ己の全てを差し出すことでしかその想いをあらわすことができなかった自分にとって、綱吉を手に入れるということが、どれだけ不相応で恐れ多いことか。
考え出しただけで幸福が足元から崩れそうで。
綱吉を愛する分だけ、不安で不安でたまらなくなるのだ。
もしも、いつか綱吉が、“幸せな家庭を築きたい”と願ったら―――
自分は、きっと、女には、敵わないから。
「貴方が決めて、貴方がすることなら、俺は――従うだけです」
「っ!?」
「たとえそれがどんな選択であっても。貴方が、願うことなら」
「何、言って・・・?」
「けどっ・・・」
ぎゅっ、と、しがみつくように細い腰に腕を回して、背がしなるほど力いっぱい抱きしめる。
言って、困らせたくない。鬱陶しいと、嫌われたくない。この人に厭われると想像しただけで、目の前が真っ暗になるというのに。
それなのに、こんなにも、自分は強欲で、貪欲で。続く言葉が、止められない。
どうしようもない矛盾に、身が引き裂かれそうだ。
「すいません・・・もう・・・俺は、貴方を離すことが、できそうにないです」
「・・・・・・隼人」
「スイマセン・・・・・・」
ふわり、と
血を吐く思いで言った獄寺の背に、優しく手が回される。
「・・・・・・・・・?」
背を柔らかく撫でた掌は、今度は獄寺の銀髪をゆっくり撫でる。
「ごめん」
そのまま、まるで母親が赤ん坊をあやすように、優しく、柔らかく、綱吉の手が獄寺を包む。
「不安にさせて、ごめん」
「っ!!そんなっ!!10代―――」
バッと身体を離した獄寺の額に、綱吉はちゅ、と軽く口づける。
目を見開いて固まった獄寺を、綱吉は真摯な瞳でまっすぐ見据える。
ムッと眉をしかめた表情は、少し怒っているように見える。
「―――言い訳くらい、させてよ」
「・・・・・・じゅうだ・・・」
「なんでそうやっていっつも1人で自己完結するんだよ。オレはまだ何も言ってない」
「・・・すみません・・・・・・」
キッパリとそう言われれば、叱られた子供のように、獄寺はうなだれるしかない。
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