その他×ツナ 1

□アンバランス・バランス
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 ――――それから、1年・・・



 * * *



 「―――なぁツナ。俺のこと好き?」

 山本が発した唐突な問いに、綱吉は挌闘していた英語のプリントから顔を上げた。
 面食らったように丸い瞳をぱちぱちと瞬きさせた綱吉は、不思議そうにふわんと小首をかしげ、片肘をついて自分を見つめる親友の顔をきょとんと見つめ返した。
 まるで、なんでそんなことを聞くの? とでもいいたげに。

 「・・・うん。好きだよ?」

 綱吉が、ごく当たり前に返した言葉。
 そのたったひとことを自分と同じ気持で返してほしいがために、いったいどれだけの長い間、山本が悶々とのたうち回って苦しんだことか。
 綱吉がその言葉の意味と重さと価値を全然わかってないから山本には笑えてくる。
 無邪気な即答が可愛くて、山本は口唇の端に苦笑を滲ませた。

 「サンキュ」

 込み上げる愛おしさのまま首を伸ばし、山本が素早く綱吉に口付けた。

 「・・・・・・んっ、」

 くすぐったそうにきゅっと肩を竦める仕草にきゅんと煽られて、山本はそのままちゅっ、ちゅっと頬から耳、こめかみにかけていくつもキスを落とす。

 「俺も。すっげぇ好き」

 ようやく唇を離した山本は、まだ吐息が触れるほどの位置で囁いた。
 綱吉曰く、『男らしくてカッコよくて爽やかで、俺の憧れと理想がギュッと詰まった大好きな顔!』を優しく、かつ最大限効果的にほころばせて間近で見つめてやれば、真ん丸に目を見張った綱吉がカァァァァッ!と一気に顔を朱に染め、電池の切れかけたオモチャみたいにカクカク不自然に動いて顔をそらす。

 「あっ、・・の、ねぇ・・・・・・。なんだよ、どうしたんだよ、いきなり・・・」

 ボソボソと抗議混じりに言いかけて、けれど途中で「あ」と小さく声を上げた綱吉は、クシャッとその顔を渋面に変えた。

 「ん?」

 大きな目をじとーっと細めて上目遣いに山本を睨んでくる綱吉は、毛を逆立ててて挑んでくる目のでっかい仔猫みたいで可愛い。
 ものすごく可愛い。きゅうっと両腕で抱き潰したくなるくらい、可愛い。

 「まさか。もう飽きたの?」

 「ハハッ、バレたか。まぁ、そんなトコだ」

 「んなぁ! さっき始めたばっかじゃんっ!」

 「んー、そっか?」


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