山本×ツナ2
□拍手短文 山ツナ4
2ページ/3ページ
「ってワケで、いいよな?」
「・・・・・・・・・う゛」
「俺、すっげー頑張ったんだぜ?」
にぃーっこり笑って擦り寄ってくる、邪気のない笑顔が怖い。目の奥が獰猛にギラリと光ってるあたりが余計に怖い。
むしろ、それだけのためにそこまで頑張れちゃう山本がけっこう怖い。
「いっ・・・いいい今、なの??」
「―――ダメ?」
「・・・っ!!」
おまけに卑怯だ。押すだけ押して、ここでいきなり引くなんてどんな計算なんだ。俺の言いたいこと絶対分かってるくせに!
そう思って涙目でジロリと睨んだところで、相手が山本じゃ効果がない。
「ううううう〜〜〜〜」
というわけで、俺は唸るしかない。
そりゃあ、正直言えば俺だって別にダメとかイヤとかじゃなくて、単にその、恥ずかしいっていうか、もうちょっと心の準備がしたいというか。
いや、準備なんて多分いままで相当時間あったんだろうけど、土壇場になると逃げ出したくなるっていうか。尻ごみしちゃうっていうか。そういうの、あると思うんだ、うん。
「――――っん???」
とかなんとか悩んでる間にいきなり視界が真っ暗になって、ふわりと何かが唇をかすめた。
判別不能なほどの軽さでそっと触れたあと、すぐにそれは離れていく。
「―――・・・?」
あれ、今のって・・と、考えるよりも先に。
ニッと山本が笑う気配と同時に、もう一度同じ熱が同じ箇所に触れてきた。今度はさっきより少しだけ強く押しつけられる。
それが山本の唇だと認識した途端、思わずピクンと引いてしまった俺の顎を山本の唇が追う。
「・・・・・・っ、・・・っ」
二度、三度。
まるで俺の反応を確かめるみたいに、そっと触れては離れるを繰り返す。
敏感な皮膚同士が擦れ合う刺激が何度か続くと、唇がじんとしてきて、だんだん熱を帯びてきて。触れられる心地良さに、何も考えられなくなってくる。
(―――もっと・・)
ぼんやりする頭で、何かが物足りないと感じた。気付いたら自分から唇を追いかけていた。
一瞬驚いたように固まった山本の唇が、すぐに俺の動きに応えるようにして柔らかく啄ばんでくる。パクパクと食べられてしまうような感覚がくすぐったくて、笑い声に似た吐息を零した。
俺も真似して少し厚めの上唇を軽く噛むと、くすぐったいのか山本がふっと微笑む。
たったそれだけのことで胸の内から満たされて、すごく幸せな気分になれた。
(なんか・・・気持ちイイかも)
お互いなにもわからないから、笑ってしまうくらいぎこちないし、映画やドラマで見るみたいな大人のキスとはほど遠いけれど。
だけど、手をつなぐより、抱き締め合うより、もっともっと山本が近い。それは、不思議な不思議な、初めての感覚だった。
.