山本×ツナ2

□拍手短文 山ツナ4
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 「ってワケで、いいよな?」

 「・・・・・・・・・う゛」

 「俺、すっげー頑張ったんだぜ?」

 にぃーっこり笑って擦り寄ってくる、邪気のない笑顔が怖い。目の奥が獰猛にギラリと光ってるあたりが余計に怖い。
 むしろ、それだけのためにそこまで頑張れちゃう山本がけっこう怖い。

 「いっ・・・いいい今、なの??」

 「―――ダメ?」

 「・・・っ!!」

 おまけに卑怯だ。押すだけ押して、ここでいきなり引くなんてどんな計算なんだ。俺の言いたいこと絶対分かってるくせに!
 そう思って涙目でジロリと睨んだところで、相手が山本じゃ効果がない。

 「ううううう〜〜〜〜」

 というわけで、俺は唸るしかない。
 そりゃあ、正直言えば俺だって別にダメとかイヤとかじゃなくて、単にその、恥ずかしいっていうか、もうちょっと心の準備がしたいというか。
 いや、準備なんて多分いままで相当時間あったんだろうけど、土壇場になると逃げ出したくなるっていうか。尻ごみしちゃうっていうか。そういうの、あると思うんだ、うん。


 「――――っん???」


 とかなんとか悩んでる間にいきなり視界が真っ暗になって、ふわりと何かが唇をかすめた。
 判別不能なほどの軽さでそっと触れたあと、すぐにそれは離れていく。

 「―――・・・?」

 あれ、今のって・・と、考えるよりも先に。
 ニッと山本が笑う気配と同時に、もう一度同じ熱が同じ箇所に触れてきた。今度はさっきより少しだけ強く押しつけられる。
 それが山本の唇だと認識した途端、思わずピクンと引いてしまった俺の顎を山本の唇が追う。


 「・・・・・・っ、・・・っ」


 二度、三度。

 まるで俺の反応を確かめるみたいに、そっと触れては離れるを繰り返す。
 敏感な皮膚同士が擦れ合う刺激が何度か続くと、唇がじんとしてきて、だんだん熱を帯びてきて。触れられる心地良さに、何も考えられなくなってくる。

 (―――もっと・・)

 ぼんやりする頭で、何かが物足りないと感じた。気付いたら自分から唇を追いかけていた。
 一瞬驚いたように固まった山本の唇が、すぐに俺の動きに応えるようにして柔らかく啄ばんでくる。パクパクと食べられてしまうような感覚がくすぐったくて、笑い声に似た吐息を零した。

 俺も真似して少し厚めの上唇を軽く噛むと、くすぐったいのか山本がふっと微笑む。
 たったそれだけのことで胸の内から満たされて、すごく幸せな気分になれた。

 (なんか・・・気持ちイイかも)

 お互いなにもわからないから、笑ってしまうくらいぎこちないし、映画やドラマで見るみたいな大人のキスとはほど遠いけれど。
 だけど、手をつなぐより、抱き締め合うより、もっともっと山本が近い。それは、不思議な不思議な、初めての感覚だった。



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