山本×ツナ2

□重なるぬくもり
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 「え、ホントに走って来たの?」

 「おぅ。早くツナに追いつきたくってな!」
 
 大きくて硬い掌にわしゃわしゃっと頭を撫でられる。

 「う、わっ!」

 なにすんだ、やめろよ、と抗議するけど口だけで。こんなふうに山本に触られるのは、実は全然イヤじゃない。
 山本の体温が感じられるこの距離はあったかくて、ほっとできて。ずっとこのまま包まれていたいなぁ、なんて、つい思ってしまう。

 「あ。そっか!」

 「ん?」

 ポンと浮かんだ名案。オレいま、すっげーいいこと思いついたかもしんない。
 
 「ツナ、どうし・・―――ッ!!??」

 問答無用で山本の両腕を思いっきり引っ張った。伸びた両腕を胸の前で交差させ、二人羽織よろしく背中から山本にくるまれてみる。

 「!」

 ピッタリ山本と密着して満足したオレは、ぎゅぎゅーっと筋肉質な腕を抱き締めた。

 「やっぱり!こーするとスゲーあったかい!」

 自分を包むぬくもりに嬉しくなって、へへ、と笑って山本の二の腕のあたりに顔を埋める。途端に山本がぎょっとしたように身を引いた。

 「・・・ツ、ツナ??」

 ダメ。逃げるなオレのぬくもり。
 山本が引きかけた両腕をガシッと捕まえ、よいしょ、と、再び自分に巻きつけた。
 痩身の割にしっかり筋肉のついた山本の胸板へ自分の薄い背中をくっつけると、後ろから守られてるような安心感がある。
 思わずくたりと力が抜けて、甘えるように凭れかかった。

 「はぁ〜・・・ぬくい。山本って体温高いよね」

 すりすりと頬を押し付ける。ああ助かった。人肌バンザイ。

 「ゴメン山本。悪いんだけど、もーちょっとこのまま手ぇ貸しててくれないかなぁ?」

 「は!?な、・・・はぁ??」

 「ん?手っていうかカラダかな。まぁいいや、ちょっと貸して?」

 オレの奇怪な行動に思いっ切り動揺してる山本は言葉が出ないらしい。
 クイっと首を上に向けて、上目遣いでチラリと山本を見上げた。
 
 「実は今日さー、オレ、ブレザーの下って半袖シャツだけなんだよね。だからすっごく寒くて」

 「や、けどツナこれ・・・」

 「今朝、出掛け際にランボに味噌汁ひっかけられちゃって。慌てて着替えたんだけど、シャツの替えだけ長袖がなくってさぁ。まさかこんなに寒くなるなんて思わなかったから、体操着も中に着てこなかったし」

 「・・・・・・・・・」

 「あーでもよかったぁ。これで助かっ・・・え、や、山本??どしたの!?」

 なんか茹ってるよ!?とオレが目を剥いたのも無理はない。山本、なんでそんなありえないほど真っ赤なの!!??
 湯気が出そうなほど赤く染まった男前は全身を硬く強張らせている。うぅとかあぁとか低く唸りながら落ち着きなく視線を彷徨わせている様子は、お世辞にもこの状態を歓迎していると言い難くて・・・。


 ―――あ、あれ??もしかしてオレ・・・・・・迷惑がられてる??


 風船の空気が抜けるみたいに、浮かれ気分がフシュゥっと萎んだ。


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