※この小説は婆娑羅学園×銀八先生のクロスオーバー作品になります。
 クロスオーバーが苦手な方は閲覧をお控えください。

 ※夢主が2人出てきます、ご注意下さい。






 第1話【正反対の転校生】



 ――季節は、春。

 桜は既に散り、青々とした葉を揺らしながら、今日も気だるげに登校する学生達を迎える。

 校則が緩いおかげか学生達は好き勝手に制服を乱し、クラスメイトや友人に挨拶を交わしている。

 ここ……所謂"問題児クラス"と言われているB組も、他のクラスと同じように朝から騒いでいた。

 HRのチャイムが鳴ろうともお構いなしに騒いでいるB組。


 ……その扉の前に、3つの影があった。


 足でバンッと勢い良く扉を開けたのは、このクラスの担任……坂田銀八。

 担任が入って来たのにも関わらず、生徒達は皆好き勝手に暴れ回っている。




「はいはーいめんどくせェけど朝のHR始めんぞー」




 出席簿を教卓に叩きつける音が響く。が、それでも生徒達はぺちゃくちゃと語り合っている。

 銀八は全くやる気の感じられない半開きの目を瞬きさせながら、後頭部をわしわしと掻いた。



「これじゃあ転校生を紹介出来ねーなァ」



 騒がしい教室では絶対に聞こえないだろうと思う程のボリュームで呟く銀八。

 しかし、何故か生徒全員が、一斉に銀八の方に顔を向けた。

 亜麻色の髪の少年と取っ組み合いの喧嘩をしていた、桃色の髪を揺らす少女が笑顔で尋ねる。




「銀チャン! 転校生って女の子アルか!?」

「そーだよー。だから皆席につけー。ってか、チャイムシカトこいてんじゃねーぞー」




 特に必死に注意する様子もなく気だるげに答える源八。

 しかし、その言葉に皆は慌てて席につき、珍しく背筋を伸ばして目を輝かせた。

 転校生、という滅多にないイベントに気分が高まってるのが目に見えて分かる。

 俺の時もそれくらい早く動け、と内心悪態をつくが、銀八はただ一つ深いため息を吐くのに留めた。




「ハイ、じゃあ早速このB組に転校してきた子達を紹介しまーす。入ってきてくださァい」




 ……達?

 銀八の言葉に皆は疑問を抱いたが、それを問う暇もなくガラリと教室のドアが開けられる。

 緊張で体が強張っている1人の少女が、先程とは打って変わってシンと静まる教室内に入ってくる。


 そして……その後に、けろっとした様子でてこてこと歩く少女が、1人。


 2人の女子高生が教室に入って来た事で、ざわっと一瞬にしてクラス全体が騒がしくなった。


 1人は、大人しそうで緊張気味らしい生徒。

 もう1人は、特に気になる所のない至って普通の生徒。

 2人とも美人と言う程でもない顔立ちだったため、何人かは興味が薄れてしまったようだ。




「ハイハイ静かにしろっての、後がめんどくせェから。じゃあ1人ずつ自己紹介してくれー」




 銀八も担任だというのに左程興味がないようで、手をひらひらと振りながら椅子に座り込む。

 大人しそうな少女はそんな銀八に少し戸惑いながらも、スカートの裾を掴みながら自己紹介を始めた。




「あ、あの……霜田央です! これからよろしくお願いします!」




 きちんと全員に聞こえるように大声で話し、深くお辞儀をする彼女……央。

 教室からまばらながら拍手が飛ぶ。彼女はぱっと笑顔になり胸を撫で下ろしていた。

 次どうぞ、と言うように隣の少女に視線を向けるよう手で促す央。


 だが……隣の少女は腕を組んだまま、全く口を開けようとはしなかった。

 にこにこと笑うその表情は、明らかに作られたものだと分かる。

 シン、と静まり返る教室。見兼ねた銀八が、読み始めたばかりのジャンプを置いて声をかける。




「風舞サン、自己紹介」

「出来ません」

「出来ません!?」




 すぱっとあしらわれた銀八が立ち上がりながら大声を上げる。


 少女は最初笑顔だったものの……だんだんと顔が歪み、眉間にしわを寄せ怒りを露わにした。

 その差があまりにも恐ろしく、何人かがヒッと怯えた声を漏らす。

 少女がバンッと目の前にあった机を叩くと。

 その席に座っていた生徒が、ヒエエと叫びながら後退りをした。




「見るからに問題児な奴らに名乗る名前なんかねーよ! ギャーギャー猿みてーに騒ぎやがって!!」

「ち、ちょっと紅ちゃん……!」

「担任すらこんなチャランポランだし、何でこんなクラスに央ちゃんを入れた!? 殺すぞ!」




 いやそっち!? と皆が口を揃えてツッコむ。

 皆てっきり自分が入れられた事に不満を抱いているのかと思っていたからだ。

 央は少女の後ろでわたわたと慌てている。どうやら自分の事で怒っている彼女を止めたいようだ。

 そんな央の様子など知らず、彼女は声高に話を続ける。




「こんな問題児クラスに入れられたからには、やる事はただ1つ……!」




 少女はそう大声を上げ、机にガッと右足を乗せて肘を置いた。

 スカートの中は、スパッツ。何人かの男はさぞガッカリした事だろう。

 目をカッと見開き、席についている生徒全員をぐるりと見回すと、少女は親指を下に向け叫んだ。




「purge……このクラスを、粛清するッッ!!!!」




 転校初日にして最悪の第一印象を皆に抱かせた彼女……風舞紅の宣言は。

 B組だけでなく、広い学校中に響き渡ったのであった――




To be continied...


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