行方知れず

□護りたかった
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あぁ、央


君は何を望む?



君が望むものなら何でも与えよう






力、夢、愛、色、心、魂、命


何が欲しい?





何て聞いても、君は何も欲しがらないのだろうね





君は綺麗事を並べてばかりな人


そして不思議な人だ





だがいつか君は望むだろう


そして、欲するだろう



その時は喜んで与えよう



君の"大切な物"を引き換えにね








あぁ、央・・・



さぁ別れを告げるんだ


これから君は、光から闇へ落ちるだろう






さようなら・・・央
















『えっ、最近物騒な事が起こってる?』





ズズ、とのん気にお茶を飲んでいた私は、大きな声をあげてしまった。

目の前にいる松陽さんは少し困った顔をしている。


私は静かに口を押さえた。






今日も普段と変わらない。


しいて言えば、いつもより雲が空に広がっている事だろう。

青空が少し隠れてしまっていて、周りが若干暗い気がした。






「えぇ・・・。ここら辺に乱暴な男達がうろついているという事を聞いたんです。

被害も多発しているようですし、あまり外には出ない方が良いでしょう」


『どんな被害が・・・?』

「やはり暴力沙汰ですよ。傷つけた上に金をぶん取りあげるそうです」







松陽さんが静かにため息をついた。



そんな物騒な事が起きているだなんて全然知らなかった。

私にはそういう情報など入っては来ない。


知らない事が沢山あると思うと、背筋に悪寒が走った。






『子供達も出さない方が良いですよね』


「そうですね、今回は安全を考えて中に入れておいた方が・・・」

『分かりました』





心配そうにする松陽さんに私は少しだけ苦笑いをこぼした。



いち早く犯人を捕まえて欲しいっていうのはあるけれど・・・。

でもやっぱり子供達の安全が第一だ。


それにしても、最近になってそういう被害が増えてきているなんて。

どういう事だろう。

やっぱり時代の違いだろうか。


まだそういう法律などが出来ていないからかもしれないが・・・。






『大丈夫です。私も子供達を守る為に頑張りますから。そんな心配そうな顔をしないでください』

「・・・ふふ、心強い。ありがとうございます」






コトリ、と空になった湯呑みを置きながら松陽さんは微笑みをこぼした。

私も笑みをこぼす。



私に出来る事はやらなければ。


もう・・・時間がない。

刻々と刻んできている時間が、どんどん短くなっていく。

そう、残された時間は後もう少し。



後、少し。







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