へい がーる!

□07
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「Let's! 遠足ウウゥゥゥ!」

「イエー!」


遠足じゃない校外学習だ







  07:Zooです








「残念ながら5班にツッコミはいりません!」

「ツッコませているのはどこのどいつだ。はぁ……ま、動物園の見学なんて聞いたことないから、仕方ないか」





 ここはとある所の動物園。

 5班である私達は、ここで他のクラスの他の班と入り口で待ち合わせをしている。


 今回の校外学習は、一度どこかに班で集まってから見学場所に向かい、現地で他の班と合流するというもの。

 私達のクラスには動物園を選ぶ班はなかったため、多分他のクラスの班を待たなければいけない。

 もちろんどこの誰がここを選んだかは分からないのだ。


 誰もいない事に不安を抱いているのは私だけじゃないはず。





「……」

「誰も来ないね、風魔君」

「……?」

「ここを担当している先生が来るはずなのに、その人も来ないのはいくらなんでも可笑しいよね? と言っている」

『ありがとうかすがちゃん。でも本当だよね……その先生きっと駄目男だね、ダメオ』





 腕を組みながらふぅとため息をつく。

 まぁ、集合時間よりは早く着いたかもしれない。

 でもそれよりももっと早く来るのが教師でしょうが。情けない。


 班長である徳川君は、腕時計をぱっと見て顔を上げた。





「もうすぐ9時だ。開園時間だろう」

「みたいだね。集合時間も9時だから……はぁ、早くしてよもう! 待つのは嫌いなのに!」

神☆子

ギイイィヤアアァァァァッ!




 後ろから、しかも耳元で聞こえた声は確かに聞き覚えのある声。

 私は思い切り叫んで真田君の後ろに隠れた。

 そしたら今度は真田君が破廉恥でござるウゥゥアアァァと叫ぶ。

 うるさいよ!




「毛利、そ奴が主が言っていた神子とやら……風舞ではないか」

「あれっ大谷君?」




 真田君の後ろからチラリと前を見れば、そこには見慣れたお顔。

 ふよふよと浮きながら私を見る大谷君がいた。

 あれ……もしかして大谷君もここ選んだわけ?




「Ah? 風舞って……これは何の偶然だオイ」

「あぁー! 伊達君!」

「何故貴様がここにいる」

「えっ、三成君まで!」

「……何だ、皆風舞の事知ってンのかよ」

「アニキも!?」




 伊達君の言う通り、コレは何の偶然だろうか。見慣れたメンバーに私も驚いて口に手を当てた。

 何これ、怖いんだけど。



「やはり我らは見えない糸で結ばれているのだ神子よ。さぁこの紙に名前を」

「絶対無いから勘弁してください。しかも何この紙……ってお前コレ婚約届けじゃねえかアアァァァ!」

「恥ずかしがる事はない、さぁ」

「さぁじゃねぇよ何だよお前。クールな毛利君カムバックプリーズ」




 この人は究極の二重人格だと思う。

 彼……後ろで私を神子と呼んだのはそう、予想通り毛利君だった。

 毛利君が渡してきた紙はとりあえず破り捨てて、と。

 叫び声が聞こえたけど気にしない。


 私は真田君の後ろから出て、静かに言った。





「毛利君以外は偶然だね」

「……我はこのような毛利今まで見た事が無い」

「気にしない方が良いよ」




 大谷君は驚き呆れたように私に言う。

 そうか、毛利君は学年トップだから1組だっけ。

伊達君と大谷君と同じクラスか。

 ……伊達君、そんな嫌な目で私を見ないでくれるかな。




「お前毛利に好かれてんのか?」

「凄い嫌だけどね!好かれてるんじゃなくて付きまとわれてるの」




 それが好かれてんじゃねぇの。

 と言った伊達君に私は引きつった笑顔を向ける。

 いやいや、クールな毛利君に好かれるのなら嬉しいけどね。

 あれはない、ナイナイ。




「おいお前ら、団体行動しやがれ」




 ふと、後ろからかかった声。低く威厳のあるその声は、聞き覚えのあるものだった。

 後ろを振り返ると、そこには腕を組んで仁王立ちをしている男が一人。




「……わお、片倉ティーチャー」

「ん、3組5班。全員揃ってるな」

「先生がここの担当なのか!」

「あぁ。今来たばかりだけどな」

駄目男やコイツ




 何事も無かったかのように紙にチェックを入れていく片倉先生。いつからいたのだ。

 というか、もっと早く来てくれたって良いんのではないか。




「駄目男じゃねぇ。俺は政宗様に同行してここに着いたんだ。皆無事だしそれで良いだろ」

「いやいやいや……ん? 政宗様? って伊達君だよね……」

「ん。小十郎は俺の世話係、つーか護衛的な?」

「はぁ!? じゃあ何で片倉先生教師やってんの?」

「んな事はどうでもいいだろうが」




 ささっと紙にチェックをし終わったのか、腰に手を当てて私に言う片倉先生。

 うん、丸投げ。




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