リクエスト小説

□小さくて、大きな、安心感
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「最近雨ばっかりだね…」
「…そうですね」
「野菜…うまく育ってくれるといいけど」

梅雨に入り、雨の日が続いている。家庭菜園を趣味とする由希にとっては、やっかいな季節だった。
生徒会室で真知と二人、残った仕事をこなしながらも心配になってくる。
…正確に言うと、残ってやらなければならないほど仕事を抱えているのは由希だけだった。由希は家庭菜園の心配をしつつも、なかなか帰ろうとしない真知のこともかなり気にかかっていた。
その時、真知が口を開いた。

「会長は…雨が嫌いですか?」
「え?…うーん、嫌いってほどでもないけど、こんなに降り続くとちょっと困るかな。真知は?」
「…私、は…」

特に何というわけでもなく聞いてみただけで。真知は自分自身の答えを用意していたわけではなかった。
最近マシになってきたものの、やっぱり自分のことを聞かれるのは苦手だった――まだ、自分がよくわからないという思いは消えてはいないのだ。
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