heretic

□シンパサイザー
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問いを受けたアディアが続きを促すように首を傾げれば、リライヴはほんの少しだけため息をついた。



「俺らがそれでもって言ってもやるんでしょ?」
「勿論。決まったことだしね」



アディアが肩を竦める。
それを見たリライヴは、そうですかとリアルを振り返る。

渋々ながらも納得したようだ。



「リアル」
「あーもー…」



出来るなら危険なことはさせたくない。
でももう味方もいないみたいだし、これはもう頷くしかない。

リアルはぐしゃぐしゃと前髪をかき回してため息をついた。



「わかったよ…」
「本当っ!?」
「変わりに!」



ぱぁっと表情を明るくした二人に、びっと人差し指を突きつける。
わがままを聞いてやったのだから、こちらとしても無条件というのは分が悪い。



「約束が三つある」



リアルの真剣な様子に、ミズホとサラは姿勢を正す。
それを傍目に見ながら、アライヴはアディアと視線を交わして目を細めた。



「1、なによりもまず任務遂行を優先すること。2、班長やそれ以上の隊長の指示には必ず従うこと。3、何があっても任務内容以上の詮索はしないこと」



なんてことはない、大きな組織なら当然守るべき事柄だ。
が、二人は元々サガラ者、サガラは基本的に自由に行動できる。
一応の確認と、釘を差すための約束だ。



「イセリアはサガラと違って国家組織だ。無駄な動きがあると巷に変な噂を流されかねないし、そうなって困るのは自分達じゃなくて上の幹部だったり女王陛下だったり」



一つの家族のような繋がりのあるサガラと違い、イセリアはかなりシビアな関係性だ。
ミスをすればすぐに切り捨てられるし、立場を悪くするのは、ミスをした本人だけではない。



「もしかしたら隊長が‘教育不足’って叩かれるかもしれない。あんま言いたくないけど、アライヴは一回裏切ってるし、俺もあんまいい立場じゃない。
幹部もよけいな神経張り巡らしてるはずだし、それにサガラだって、まずいことになるかもしれないだろ?」



言って腕を組む。

まるで自分やアライヴの為のような言い方だが、二人にはこれが一番有効だ。
サラもミズホも、自分より人の心配をする性格だ。

なにより後を引くことになるのは、自分達だけではない。
サガラが下手な標的になるのは、向こうだって避けたいはずだ。



「お前らがミスって一番困るのは誰か、よく考えて行動しろよ」
「…っはい!」



しっかりと守るべきことを告げたリアルに、隊長二人は肩を竦める。



「そういうこと。マリク達は明後日にまた任務が入るわ。詳しい話は明日するから、10時にまたここに来てね。以上、解散」

「失礼します」
「失礼しましたー」


解散を告げ部屋で二人きりになる。
静かになった部屋で、アディアは肩の力を抜いて頬杖をついた。



「あの子、なんか随分立派なこと言うようになったわね」
「一丁前に班長らしいこと言うようになったな」



くすくすと笑うアディアに、思わずため息をつく。
いつの間にあんな責任感を持つようになったのか。



「次の総隊長、あの子にしようかな」



聞こえた言葉に、思わず目を細める。

――リアルが総隊長、か。


悪くないと思う。

正義感も強く、経験も豊富だし実力は充分ある。
むしろ彼の方がずっとこの先安泰に違いない。

次期総隊長の推薦権は総隊長にあるので、本人が申し出を受けさえすれば、冗談話ではなくなる。

しかしそれがリアルにとっていいのか悪いのか。



「…本人次第、だろ」
「ふぅん…?」



気のないようなあるような、そんな返事を返したアディアに、アライヴは腰を上げる。
先の分からない戯れの話など、考えるだけで馬鹿馬鹿しい。



「次の13班の任務は?」

「マリク達にノーバディの討伐任務。リアル達は、あの子の体調が完全に戻るまではデスクワークになるわ」

「そうか」



その後しばらくつまらない仕事の話をして、総隊長室を後にする。
一人になった廊下では、不思議と部屋まで誰とも会わなかった。



 
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