heretic
□シンパサイザー
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でも信じられない。
サガラに行くとミズホがいないことは一度もなかった。
言うとアライヴはそれはそうだと肩をすくめる。
「隠密は夜行動だから昼間は家にいるんだ。サラも、アディアとタイマン張ったくらいには強い。実力に関しては、二人とも何も心配はないんだ」
「一応、私達ノーバディとも戦えるんだよ?」
「そうそう、リライヴだって戦えたでしょ?そういう知識はあるんだから大丈夫なの!」
そういえばリライヴもイセリアに入ったとき、なぜかノーバディの対処法を知っていた。
リアルはさっきとは違う意味で渋い顔をして首を傾げた。
「…なんで?」
「皮肉だけど、私は劉綺に教えてもらったの。ミズホちゃんはなんだっけ、アライヴさんのまねしたんだっけ?」
「うん。教えてって言ったら教えてくれたの」
ミズホの言葉に、思わずちらりと視線を流す。
それを受け止めたアライヴは、肩を落としてため息をついた。
「教えんなよ…」
「まさかこんな事態になるとは思わなくてな」
ため息混じりにそう呟く。
その表情は後悔とも戸惑いともつかない。
リアルはあぁもう、と前髪をかき揚げる。
そのどうあっても納得しない様子に、ミズホはいよいよ泣き出しそうな声を出した。
「どうしてもリアルは嫌なの…?」
「そんなの――…って、ちょ、お前」
当たり前だ、と言う前にリアルはまさかと目を見開く。
目の前の小さな体が震えて、表情が歪んでいたからだ。
「私そんなに頼りない?絶対駄目なの?」
「いやいやお前、ちょっと待てって」
「リアル私のこと…っ、嫌いなの…っ?」
じわり、と大きな瞳に涙が滲む。
――マズい…っ!
焦ったリアルは自分でも予想外に大きな声を出してミズホの肩を掴んだ。
「心配なんだよ!」
部屋に響いた自分の声に、どうしようもなく顔が熱くなるのがわかる。
が、ここははっきりさせておかなければとリアルは羞恥心をかなぐり捨てて肩を掴んだ手をゆるめた。
「だからその、お前が戦ったりして怪我とか、そういうのが嫌なんだ。お前がよくても俺は嫌だ。リライヴだって、サラに危ないことはさせたくないだろ?」
振り向いてリライヴに問えば、少しだけ眉根を寄せて頷く。
今まで何も言わなかったが、彼も同じ気持ちに違いなかった。
「今まではいつも側にいて護ってやれた。でも班行動はお前だけに構ってられない。護りきれなくて悔しい思いをするのは嫌だ」
それに、とリライヴは付け足す。
「サラになにか傷が残るのは嫌だ」
「…でも、せっかく来たのに」
相手の真剣な様子に、二人は肩を落とす。
護ってほしいとは言わないし、自分のことは自分でなんとかするつもりだった。
でも、リアル達はそれで納得してはくれないのだ。
「じゃあこういうのはどうだ?」
心底困り果てた様子の二人に、アライヴは仕方ないなと息をつく。
なにか提案があるのかと、言い合う四人が振り向けば、彼はアディアの執務机に軽く腰掛けた。
「班を二つに分ける。ミズホとサラはリアルとリライヴと組め。他は二人を除いた4人で任務をこなせ」
「へ?」
思わず間の抜けた声が出る。
その提案はどう考えても今考えた様子ではなく、四人どころか13班も皆首を傾げた。
「アンタ達が言うと思って考えたのよ。これならいつも近くにいて護れるでしょう?二人もその方がいいでしょうし、遠慮もないだろうし」
「どうだお前ら」
話しぶりから見ても、安易に考えたわけではないのがわかる。
自分達も目の届く場所に置けるなら安心はできる。
リアルはリライヴに伺うように首を傾げた。
「どうする?」
「…アディアさんは」
しばらく考えた素振りを見せたリライヴは、表情を変えずにアディアを振り返る。